研究課題
昨年までに、2015年7月および2016年7月に岡山市で得られたヒトスジシマカの雌成虫の最大捕集数を用いて、ヒトスジシマカの生息密度と周囲の環境との関係性を解析した。その結果、29地点中26地点が市街地、3地点がアカマツ群落に位置し、地点間における植生の差異はみられなかった。また、建物用地に配置された調査地点では蚊の生息密度が高い傾向が認められたが、標高や起伏量については地点間の差は殆どみられなかった。今後は、利用する環境データを検討して解析を進めるとともに、2014年のデング熱国内流行時にウイルス陽性蚊が複数検出された新宿御苑の、当時のヒトスジシマカ生息密度と季節消長、植生および蚊のウイルス保有状況との関係を解析する予定である。マダニの生息環境を景観スケールで評価するために、マダニの種構成と環境要因との関係を解析し、マダニ出現リスクマップの試作を行った。豊岡市、鹿児島県、厚木市のそれぞれ複数か所の調査地におけるマダニ相、環境要因(年平均気温、夏季降水量、冬季降水量、海からの距離、積雪日数、TWI (Topographic Wetness Index: 地面の湿り具合)、土地利用要因(周辺250m内の農地、森林、草地、都市の面積)の相関を主成分分析(PCA)により評価した。その結果、マダニ種ごとの出現傾向が把握でき、夏季の降水量が最も寄与していることが示唆された。また、豊岡市および鹿児島県内の調査地をモデルに、野生動物の出没しやすさ(景観要因)、人との接点(人口密度)を加味したマダニ出現リスクマップを作製したところ、谷に農地のある集落の山との辺縁でマダニ出現リスクが高いと予測された。今後はさらに調査地を増やし、季節消長も考慮して検証するとともに、SFTS患者情報をできるだけ加えた全国スケールでの解析も進め、SFTS患者発生予測に寄与する。
3: やや遅れている
研究代表者の業務が多忙であり、追加調査と解析が十分に進められなかった。具体的には、試作した蚊成虫潜み場所の3Dマップの検証のためには国内外の複数か所の蚊の捕集成果を加える必要があるが、特に海外での調査に時間がかかり、十分量の情報が入手できなかった。一方でマダニの出現リスクマップはかなり進められたが、SFTS症例の患者情報を入手することができなかった。これらの理由で研究の遂行が遅れたため、来年度の期間延長を許可いただいた。
蚊においては、岡山市および東京都新宿御苑のリスクマップ作製を目指し、衛星画像あるいは現地調査で撮影した画像による環境指標の利用可能性も検討する。マダニのリスクマップ作製において、今後はさらに解析地点を増やし、季節消長も加味するなど、景観スケールでの買いs系を進め、SFTS患者情報をできるだけ加えて全国スケールでの解析を行い、患者発生予測を可能にする。3次元(3D)マップの試作品をさらに検証する。
蚊およびマダニの生息密度結果と環境要因との関係解析を重点的に行い、当初予定していたGIS関連の経費を使用しなかった。 また、野生動物の出没情報等の入手、SFTS患者情報の入手ができなかったことから、最終年度には、すべての費用をつぎ込み、解析を進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
American Journal of Tropical Medicine and Hygiene
巻: 98 ページ: 1460-1468
10.4269/ajtmh.17-0954.