研究課題
マダニの生息環境を景観スケールで評価するために、マダニの種構成と環境要因との関係を解析し、マダニ出現リスクマップを試作した。複数の調査地において、マダニ相、環境要因(年平均気温、夏季降水量、冬季降水量、海からの距離、積雪日数、TWI (Topographic Wetness Index: 地面の湿り具合)、土地利用要因(周辺250m内の農地、森林、草地、都市の面積)の相関を主成分分析(PCA)で解析した結果、マダニ種ごとの出現傾向に夏季の降水量が最も寄与していることが明らかになった。SFTS浸淫地の調査地をモデルに、野生動物(シカ・アライグマ)の 出没しやすさ(景観要因)と人との接点(人口密度)を考慮したマダニ出現リスクマップを試作した結果、谷に農地のある集落の山との辺縁がマダニ出現のリスクが高いと予測された。SFTS患者報告数と報告地の情報にシカ個体数、森林面積、人工林面積、農地、平均気温、年降水量を加えて構築した自己回帰モデルにより、患者発生には森林面積とシカ個体数の寄与度が高いことが示唆された。景観スケールでの解析においては、マダニの属レベルでのSDM(種分布モデル)構築には地点数が不足したが、DCA(除歪対応分析)によるアプローチは有効であることを確認した。さらに多くの他地域の情報も加えて検証したい。また、リスクマップには、地域毎の野生動物の分布や個体数密度等の情報の重層でさらに精度が上がるものと考えられる。全国スケールにおいては、より詳細(市町村単位)な症例報告による解析や年ごとのデータの解析等が必要と考える。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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