本研究では、シロイヌナズナにおいてSPOT1/KNS3と呼ばれる機能未知タンパク質がホウ酸チャネルのカーゴレセプターとして小胞体から細胞膜への輸送の初期段階を制御することを示唆した。本研究の端緒は、GFPタグしたホウ酸チャネルNIP5;1が根の表皮細胞において小胞体にとどまる変異株を単離し、その原因遺伝子をSPOT1/KNS3と同定したことにある。KNS3の変異株は花粉の外壁構造に異常を持つことで知られていたため、KNS3のタンパク質輸送機能は花粉の発達にも寄与すると考えられる。本研究では、様々な膜タンパク質のkns3変異株の根の表皮細胞における局在を解析したところ、ホウ酸チャネルNIP5;1とNIP6;1のみが小胞体にとどまった。一方、葯に発現し花粉発達に重要なホウ酸チャネルNIP7;1の局在を解析したところ、KNS3には依存せずタペート細胞の細胞膜に局在した。また、KNS3の細胞内局在解析を進め、小胞体膜とゴルジ体膜に局在することを明らかにした。以上から、KNS3はホウ酸チャネル特異的な小胞体―ゴルジ カーゴレセプターである可能性が高まった。また、KNS3の2つのホモログの解析を行い、これらもNIP5;1の小胞体からの輸送に重要であることを明らかにした。三者は共同して機能する可能性が高い。KNS3の生理学的意義を解析するため、各変異株と三重変異株における生育も解析したが、ホウ素条件に依存した明確な生育異常は見られなかった。ホウ酸チャネルとKNS3の相互作用については免疫沈降法、BiFC法、酵母Split-ubiquitin two-hybrid法の実験系を確立したが、明確な結論は得られておらず、解析を継続している。
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