研究課題/領域番号 |
16K15096
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20211766)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 協奏触媒 / 精密有機合成 / 酸化的カップリング / フェノール酸化 |
研究実績の概要 |
本研究は、先に研究代表者らが見出したアルコール酸化協奏触媒システム、すなわち有機ニトロキシルラジカルと銅イオンが協奏的に分子状酸素を活性化して高化学選択的アルコール酸化を実現する触媒システムの基質適用性をフェノール類に拡張させて、分子内フェノールカップリングの精密制御に基づく多環性骨格への展開に挑戦するものである。 研究代表者らは、これまでAZADO-CuCl/Bipyridyl/DMAP協奏触媒が、常温・常圧で空気中の酸素を酸化剤として、無保護アミノアルコールをはじめ多様なアルコールの高効率的酸化を実現することと、単純フェノール類の空気酸化を触媒してビスフェノール型生成物を与えることを確認していた。2年計画研究の初年度にあたる平成28年度は、分子内フェノールカップリングを起こすことが知られている種々のビスフェノール基質をモデル基質として、AZADO-Cu触媒システムによるフェノール空気酸化カップリング反応を効率的に推進されるための反応条件を精査した。具体的には、当研究室で開発した有機ニトロキシルライブラリーを活用して、銅塩、リガンド、添加剤が及ぼす影響を詳細に検討して、空気酸化条件でのAZADO-Cu系の酸化的フェノールカップリング反応性制御因子を実験的に追求した。その結果、中程度の収率ながら計画した反応を進行させて分子内カップリング生成物を与える条件を特定することに成功するとともに、本反応の進行を受け入れる基質要求性の概要を把握することができた。また、検討の途上で、本協奏触媒系が、当初想定してなっかった含硫黄アルコールの高アルコール選択的酸化を実現するという有用な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記述した研究計画を順調に進行させて、所期に掲げた初年度の目標の一部を概ね実現することができた。加えて、本触媒の基質適用性については当初想定していなかったスルフィドや1,3-ジチアンの共存を許容する高選択的アルコール酸化触媒システムとして利用できるという萌芽的成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果に基づき計画の修正を図りつつ、最適化された条件を用いて多環性アルカロイドの骨格構築への応用を検討する。具体的には、norbelladineからの多様合成が知られる3種のヒガンバナ科アルカロイドの骨格合成を検討する。まず、バイオミメティク合成研究で最も実績のあるgalantahmine合成中間体(N-保護体)を用いて、AZADO-Cu触媒による空気酸化条件下でのカップリング反応を精査する。次いで、N-無保護の基質を用いて、精密制御した分子内フェノール環化の可能性を追究する。天然物合成への応用を図る。AZADO-Cu協奏触媒に潜在する機能性開発の観点から、リグナン類をモデルとした分子間反応への応用の可能性についても検討を行う。得られた結果を有機的に統合して基盤研究に展開するための成果を集積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品の価格に変動があり、少額ではあるが物品費が未消化額が計上された。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の物品費として使用する予定である。
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