研究課題/領域番号 |
16K15097
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮本 和範 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (40403696)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超原子価 / ハロゲン / キセノン / アルキニルカチオン / ジカチオン |
研究実績の概要 |
有機化学において、従来実験化学的に極めて発生が難しい活性種は多数存在する。本研究では、申請者は、超原子価ハロゲン化合物やキセノン化合物の極めて高い脱離能を活用し、これまで発生が非常に困難とされてきた高反応性中間体の発生に挑戦すること、具体的には、アセチレン末端 sp 混成軌道上に発生するアルキニルカチオン(RC≡C+)や二原子炭素(C2)、酸素原子上に二つの正電荷を持つオキソニウムジカチオンの発生を検討することを目的としている。 この目的に即して、まず前駆体合成について種々検討を行った。すなわち、我々が新しく見いだしたアリール基転移反応を広く検討したところ、塩化アリール、塩化ビニル誘導体に広く適用できることが判明した。これにより、非常に高い脱離能を示す超原子価塩素化合物を合成することが可能になったが、これを更に今後アルキニルカチオンの発生に必要なアルキニルクロラン(RC≡CCl(Ar)X)の合成に適用するべく詳細に検討する。また、アルキニルゼノニウム(RC≡CXe+)もこの目的に有力な前駆体であるが、ホウ素ーキセノン(II)交換反応を利用することにより、系中で発生させる条件の目処が立ちつつある。次年度はこれらを用いて、アルキニルカチオンの発生を広く検討する。 既に予備的結果ではあるものの、超原子価アルキニルヨーダンとフッ化物イオンを用いることにより二原子炭素を発生させることにも成功しつつある。 また、トリアルキルオキソニウムカチオンの安定種を複数合成することに成功しており、今年度は続くアルキル化によるジカチオンの発生を広く検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は今年度、アルキニルヨーダンを用いて、活性種であるC2の発生にすでに成功している。また、同時に複数の活性種を発生するための各種前駆体の合成に成功しつつあり、当初の目的を達成するための手段が揃ってきている。これまで多くの化学者の挑戦を退けてきた、活性種の数々の発生の証明にはかなり困難が予想されるものの、集中的に検討する下地ができており、十分実現可能性があると考えられる。今年度は概ね目的を達成できたと考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は1.C2発生の更なる証拠を得るための検討 2.アリール基転移反応によるアルキニルクロランの合成検討 3.アルキニルゼノニウムの配位子交換と熱分解反応によるアルキニルカチオンの発生の検討 4.オキソニウム塩の強力なアルキル化剤によるアルキル化を検討 する予定である。 これらはいずれも、当初からの目的に沿ったものであり、適切な計画であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度開始前に既に納品していた試薬、溶媒を用いることにより、円滑に研究を遂行することができたため、当初想定していた物品費はほとんど使わずに研究を行うことができた。計算化学的アプローチにも既存のソフト・ハードウェアを活用したことも大きな増額を必要としなかった原因と考えられる。一方、本課題研究に深く関連する学会に参加、発表するため、7月にスイスで開催された超原子価ヨウ素国際会議に参加したことが、予想よりも旅費が高額になってしまった理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、様々な研究上必要な試薬を購入するために、物品費が今年度より大きく増加することが想定される。例えば、二フッ化キセノンやC1-カルボランアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートなどはかなり高価な試薬であるが、これらを用いて広く検討する予定である。 これらはいずれも重要な試薬であり、また別途合成することが困難なものである。
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