DNAリピート病と総称される疾患は、3個から5個の塩基を含む配列が異常に繰り返された伸長構造によって発症する[1]。ハンチントン病などのように多くの疾患は遺伝性で、治療困難な疾患である。本研究では、単独配列には低い親和性しか示さないものの、繰り返し配列に対して、リガンドどうしが協奏的に作用することで特異的に高い親和性を示しDNA上に集積する低分子リガンドの開発を目指した。 H29年度は、2本鎖配列d(CGCG/GCGC)を中央で切断する制限酵素AccIIと、d(CGCG/GCGC)の繰り返し数およびその間隔を変えたDNA基質を用いて、各種リガンドの繰り返し配列への結合を評価した。また、比較として天然物クロモマイシンA3の結合を評価した。リガンドは基本的なアントラセノン構造を基本に、金属結合部位リンカーの長さが違うもの、シクロヘキサン部にヒドロキシ基を導入したもの、シクロヘキサン部を開環した誘導体などを合成した。その結果、アントラセノン構造と金属錯体部位とのリンカー長の短いリガンドは、d(CGCG/GCGC)間隔の短いRNA鎖に協同的結合を示し、リンカー長が繰り返し配列間の認識に重要であることが確認された。また、シクロヘキサン部を開環した誘導体も繰り返し配列に選択的な共同性を示したが、シクロヘキサン部への水酸基の導入は結合特定を失わせる結果になった。さらに、天然物クロモマイシンA3はd(CGCG/GCGC)間隔が1個のDNAさらにはd(CGG)16に協同的集積性を示すという興味深い知見が得られた。
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