研究実績の概要 |
白金炭素存在下、イソプロパノール、水と弱塩基が共存すると、「芳香族フッ素化合物の脱フッ素化 (Adv. Synth. Catal.2012, 354, 777)」や「芳香環の重水素標識反応 (Adv. Synth. Catal.2013, 355, 1529)」が進行する事を明らかにするとともに、ロジウム炭素やパラジウム炭素を触媒とした、水中で進行するアルコールの脱水素酸化反応を確立している(Green Chem. 2014, 16, 3439; Adv. Synth. Catal. 2015, 357, 1205)。また、本研究の申請時には、水中イソプロパノール存在下、白金炭素を触媒とした芳香核還元反応が、ステンレススチール(SUS304)容器中で特異的に進行する事を確認し投稿中であった(Adv. Synth. Catal. 2015, 357, 3667)。 H28年度の研究では、SUS304による核還元反応に対する加速効果が鉄元素によるものであることを解明するとともに、水素の外部添加を必要としない、穏和な条件下で進行する芳香核還元反応として確立した(投稿準備中)。この反応は、有機ケミカルハイドライドとして注目されているメチルシクロヘキサン-トルエン系の、還元(水素貯蔵)工程に大きく寄与するものである。 また水とアルコールを組み合わせると、白金族触媒存在下脱水素反応が進行し水素を取り出すことができる。メタノールの場合にはギ酸を経由して3分子の水素が取り出される。H28年度は加熱反応によるバッチ式水素発生法とともに、マイクロウエーブ照射によるフロー式連続反応を検討した。いずれの反応においても水素の生成が確認され、研究目的達成に向けた指標を確立することができた。なおマイクロウエーブフロー反応に関しては、電波法との関連で、共振周波数を調整した触媒カートリッジの新たな開発が必要である事が明らかとなった。
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