本研究では、STING(stimulator of interferon genes)経路リガンドであるcyclic di-GMP(c-di-GMP)を搭載した脂質ナノ粒子(LNP)(cdGMP/LNP)と免疫チェックポイント阻害剤である抗programmed cell death 1(PD-1)抗体を併用することにより、抗PD-1抗体療法抵抗性のがんに対する複合的がん免疫療法を実現することを目的としている。平成29年度では、平成28年度に構築したcdGMP/LNPと抗PD-1抗体の併用療法の検討を行った。免疫原性が高いがんを皮下移植したマウスモデルにおいて、cdGMP/LNP単剤、抗PD-1抗体単剤ともに抗腫瘍活性を示した。さらに併用することで、抗腫瘍活性の相乗的な増強が認められた。続いて、抗PD-1抗体療法抵抗性である免疫原性が低いがんを移植したマウスモデルを用いて併用効果を検証した。本研究においても抗PD-1抗体単剤では全く抗腫瘍活性を示さなかった。平成28年度の結果より、cdGMP/ LNP単剤は抗腫瘍活性を示すことが明らかとなっているが、興味深いことに抗PD-1抗体と併用することで、その抗腫瘍活性がさらに増強することが見出された。dGMP/LNPと併用することで強力な抗腫瘍活性が認められた。この結果は、cdGMP/ LNPと抗PD-1抗体の併用療法が抗PD-1抗体療法抵抗性がんに対して治療効果を示す可能性を示唆するものである。
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