1981年以降、先進国における死亡原因の第一位はガンであり、現在日本では人口の約30%がガンにより死亡している。がん治療薬の開発は精力的に進められてきたのにもかかわらず、ガン細胞のみを特異的に死滅させる根本的治療薬の開発には依然として成功していない。申請者たちは最近、微生物由来のリボソームタンパク質様遺伝子産物が、がん細胞特異的に細胞死を誘発することを発見した。本申請研究では、この遺伝子産物のガン細胞におけるターゲット分子の同定と分子メカニズムの検証を行った。 本研究では、1)DdMRP4のガン細胞増殖抑制に機能するドメインの同定と2)DdMRP4遺伝子産物の標的分子を同定することにより、増殖抑制の作用機序の解明を行うことを目的とした。 1)に関しては遺伝子クローニング作業中遺伝子断片が大腸菌内にて不安定であり、かつリコンビナントタンパク質の生成に大きな問題がありリコンビナントタンパク質を含む大腸菌が分離できなかったことにより、目的の培養ガン細胞におけるドメインそれぞれの効果を検証するに至らなかった。 2)に関しては、酵母ツーハイブリッド法によりDdMRP4と相互作用する遺伝子を4つ分離することに成功した。さらに、それらの遺伝子の分子機能解析により、それらがアポトーシス関連遺伝子を含むことや遺伝子破壊株の作製とその表現型解析により細胞性粘菌においては細胞の発生や分化に関連することを明らかにした。 以上の結果は、DdMRP4が少なくともアポトーシス関連遺伝子を含む4つの遺伝子産物と相互作用し、ガン細胞に細胞死をもたらしていることを示唆するものであった。 今後の検討課題としては、なぜこれらの遺伝子がガン細胞特異的に細胞死を誘導するかを分子レベルで解析することが必要であると考えられる。
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