研究課題/領域番号 |
16K15132
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
富山 貴美 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (10305633)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症 / 腸内フローラ / 生薬抽出物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、認知症と腸内フローラの関係を明らかにし、将来の治療薬開発へつなげることである。 平成28年度は、認知症モデルマウスと野生型マウスの腸内細菌を比較するとともに、認知機能改善作用のある生薬抽出物Ekc-1をモデルマウスに投与して、Ekc-1の腸内フローラに与える影響を調べることであった。 モデルマウスには、当初、当研究室で作製したAPP Osaka変異ノックインマウスを使う予定であったが、計画を変更して、同じく当研究室で作製したOsaka変異APPと野生型ヒトタウを共発現するダブルトランスジェニックマウスを使うことにした。後者のモデルマウスの方が、アルツハイマー病の病態をよりよく再現していると考えられたからである。 14カ月齢のダブルTgマウスを2群に分け、一方にはEkc-1を、もう一方には水を1カ月間毎日経口投与した。野生型マウス(ダブルTgのlittermate)には水を1カ月間経口投与した。投与終了後、糞を採取し凍結保存した。モリス水迷路により、マウスの空間参照記憶を測定したところ、ダブルTgマウスは明らかな記憶障害を示したが、この記憶障害はEkc-1投与により野生型マウスと同レベルにまで改善した。行動試験終了後、盲腸内容物を回収して凍結保存するとともに、脳を取り出し、脳切片を作製した。組織化学により脳の病理を調べたところ、Ekc-1投与により、脳のアミロイド病理、タウ病理は顕著に改善した。糞および盲腸内容物の細菌叢解析はこれから行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、採取した糞を外部の検査会社に送付し、そこで腸内フローラの解析をしてもらう予定であったが、交付された研究費が少なく、必要な額を外注費に充てることができないため、これは断念した。かわりに、他大学の腸内フローラの専門家と共同研究の可能性について話し合い、糞の解析はその研究者にお願いできることになった。凍結保存中の糞と盲腸内容物は、今年度(平成29年度)に実施する実験で回収されるサンプルと合わせて、その研究者に送付し解析してもらう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
認知症の発症が腸内フローラの影響を受けるものならば、モデルマウスに野生型マウスの正常な腸内細菌を移植すれば症状は改善するであろうし、逆に、野生型マウスにモデルマウスの異常な腸内細菌を移植すれば何らかの認知症の症候を示すであろう。今年度はこの実験を行う予定である。 また、抗生物質の経口投与が、おそらくは腸内フローラの変化を介して、脳のアミロイド病理を減少させることがモデルマウスで報告されている。今年度はこの実験結果の確認も我々のモデルマウスで行う予定である。 昨年度に行った実験と今年度に行う実験で得られる知見を総合的に判断して、認知症と腸内フローラの関係を明らかにしたいと考えている。
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