研究課題/領域番号 |
16K15133
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
眞野 容子 文京学院大学, 保健医療技術学部, 助教 (90458555)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロアントシアニジン / クランベリー / 尿路病原性大腸菌 / IBCs形成UPEC / 細胞付着性・侵入性 / 併用効果 / 薬剤感受性試験 |
研究実績の概要 |
尿路感染症は適切な抗菌薬治療にもかかわらず高率な再発率と抗菌薬耐性に関して健康上深刻な問題である.再発、耐性の要因はヒト膀胱上皮細胞へのUPEC の侵入性とintracellular bacterial communities (IBCs)の形成である.よって現行の菌―抗菌薬作用のみを論じる薬剤感受性試験において感受性を示した抗菌薬の治療ではIBCs形成UPEC には無効である.よって既存の抗菌薬療法とは異なるコンセプトで研究を実施した. 反復する尿路感染症の要因はその原因菌とされるUPECの組織侵入性と考えられるため膀胱上皮細胞を用いて細胞侵入性の検討を実施した.その結果、細胞内に侵入し、抗菌薬の作用から逃れていることが明らかとなった.よって抗菌薬治療から逃れ残存した菌が再発の要因であることが示唆された.次いでクランベリーの主成分であるポリフェノール類のプロアントシアニジンを用いて細胞侵入抑制効果の検討を実施した.その結果、膀胱上皮細胞HTB-9を用いた、反復性尿路感染症由来大腸菌の細胞付着性・侵入性がクランベリーに含まれるプロアントシアニジンA型により抑制されることが明らかとなった.さらに本研究ではプロアントシアニジンのA型とB型を用いて抗菌薬と併用し、治療や予防投与の際の薬剤使用量を減らすことが可能か検討した.併用効果の検討でA型はBK1のCAZに、B型はBK1のPIPCに併用効果が認められ、ESBL産生大腸菌では361のCAZに併用効果が認められた。耐性株においてはCAZのMIC値の判定は耐性を示していたがプロアントシアニジンとの併用効果によりMIC値が減少し判定基準より感性となった.これらのことから、菌株にはよるものの、UPEC、ESBLに対してプロアントシアニジンは併用効果があると示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロアントシアニジンと各種抗菌薬の併用効果の検討、プロアントシアニジンと各種抗菌薬のBiofilmとmotilityのsub-MIC効果の検討がほぼ終了している.併用効果の検討では尿路病原性のすべての菌に併用効果があるわけではなく菌株間差があった.この結果より差の要因を検討していく必要性があると考える.Biofilmとmotilityのsub-MIC効果の検討ではプロアントシアニジンの効果は認められなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は遺伝子関連と電子顕微鏡での形態観察を中心に研究する予定である.細胞侵入性のメカニズムを解明するため大腸菌鞭毛関連遺伝子を探索する.さらに当初の研究計画であった各種biofilmとmotilityに関与する遺伝子の確認と解析を推進する. 電子顕微鏡下ではプロアントシアニジンの影響を確認するためにプロアントシアニジン存在下と非存在下で培養した大腸菌の鞭毛の変化を観察する.平成28年度で事前に鞭毛染色をしており光化学顕微鏡下での変化は確認済みである.さらに電子顕微鏡で撮影する事によりその差が明確に判断できると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表宿泊交通費の申請をしていたが共同研究費にて学会へ参加したため旅費が残余金となった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の論文投稿の費用に回すこととする.
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