研究課題
本研究では、進行性骨化性線維異形成症 (FOP) 患者の病態を模倣した 2 種類の培養細胞評価系を用いることで、FOP が惹起する異常な骨形成タンパク質 (BMP) シグナル伝達経路を特異的に阻害する低分子化合物を天然資源より探索し、医薬品のシードを見出すことを目的としている。本年度は、昨年度まで対象としていた微生物の培養液から、現所属先の特色でもある海洋生物(インドネシア近海で採取された海綿)の抽出物 377 サンプルを素材にスクリーニングを実施した。その結果、6 サンプルに骨芽細胞分化 (ALP 活性を指標) 抑制作用が確認され、このうち活性の再現性が良好な No. 2 とNo. 256 の 2 サンプルより活性成分を単離することができた。まず、No. 2 からは、lamellolactone 類および polybromodiphenyl ether 類を同定し、いずれも 10 ug/ml の濃度で細胞毒性を示すことなく、前者は 5~20%、後者は 45% 程度に ALP活性を低下させた。これまでに lamellolactone 類の生物活性の報告はなく、今回が生物活性の初めての知見となる。なお、本サンプルからは新規物質の取得にも成功し、構造および活性の詳細について検討を進めている。No. 256 からは、dysidenin 類および polybromodiphenyl ether 類を単離し、前者は IC50 値 (50% 阻害濃度): 2.3 ug/ml で ALP 阻害活性を示した。両化合物はともに、海洋由来化合物の特徴の一つであるハロゲンを構造中に含むことは興味深い。残りの選択サンプルは順次、単離精製を進めている。次に、一昨年度報告した新奇なスコップ様構造を 2 つ有する新規化合物 scopranone については、各種 [13C] 標識体の取込み実験より酢酸および酪酸からなるポリケチド化合物であることを推定した。さらに共同研究者により生産菌のゲノム解析が進められ、その生合成遺伝子群が同定されている。
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