研究課題/領域番号 |
16K15136
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
周東 智 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (70241346)
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研究分担者 |
福田 隼 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (30434450)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レジデンスタイム / リン脂質 / トルテロジン / ムスカリン受容体 |
研究実績の概要 |
分子設計:リン脂質部としては、原料の入手容易性と化学的・生物学的安定性を考慮し、飽和型のジパルミトイルホスファチジル基を用いる。一方、トルテロジンの構造活性相関研究から、薬理活性を損なうことなく側鎖導入可能であることが知られている末端メチル部位をリンカー結合部とする。さらに、LPSにおいてリン脂質部が膜にアンカリングし、かつ、リガンド部が細胞膜受容体に効果的に結合するためには両部位の距離が鍵となることを考慮し、容易に鎖長を変えられるPEGをリンカーに用いて好適距離を探索する。以上の知見・考察に基づき、PEG数の異なる(n = 1,3,5,7,9,11)6種のトルテロジンをリガンドとするLOCを設計した。 合成:申請者が先に開発した放線菌ホスホリパーゼ (PLDP) が触媒するホスファチジル基転移反応を鍵反応として、テルトロジンをリガンドとするLPCの合成研究を実施した。当年度は先ず、効率的な合成経路を確立することに成功した。さらに、in vitro評価用のLPCとして、リンカー鎖長の異なる6種の目的物をそれぞれ約10 mg合成した。 in vitro評価:ムスカリン受容体発現膜画分を用い、放射性リガンド結合に対するLPCによる持続的競合阻害活性を調べた。その結果、膜画分を緩衝液で洗浄することでトルテロジンは容易に解離するが、LPCおいて作業仮説通りにリン脂質部が細胞膜にアンカリングして、全く解離しないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に述べるように、極めて順調に研究が進展している。 合成:申請者が開発した放線菌ホスホリパーゼ (PLDP) が触媒するホスファチジル基転移反応を鍵反応として、テルトロジンをリガンドとするLPCの合成法の確立に成功した。本合成法を用いて、in vitro評価用のLPCとして、リンカー鎖長の異なる6種の目的物をそれぞれ約10 mg合成した。以上のように、当初の計画通りに合成研究は進展した。 in vitro評価:ムスカリン受容体発現膜画分を用い、放射性リガンド結合に対するLPCによる持続的競合阻害活性を調べた結果、膜画分を緩衝液で洗浄することでトルテロジンは解離するが、解離しないことを確認した。以上のように、LPCおいてリン脂質部が細胞膜にアンカリングして解離しないという作業仮説を支持するin vitro試験結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
以下の通り、基本的には当初の計画に基づき研究を推進する。 合成:前年度において、合成した6化合物の中でin vitro評価で顕著な洗浄抵抗活性を示した化合物1種または2種を大量 (100 mg程度) 合成する。 in vivo評価:大量合成したLPCをマウス膀胱内投与系でトルテロジンと比較評価する。化合物を膀胱内投与後、膀胱内を洗浄する。洗浄直後および時間経過後のテルテロジンとLPCでの膀胱組織において残存活性を調べる。具体的には、膀胱組織を採取し、放射性リガンドに対する結合親和性を測定する。テルテロジンまたはLPCが組織に残存していれば、放射性リガンドの結合は競合阻害されるはずである。本実験によって、LPCが作業仮説通り、細胞膜にアンカリングすることによって長時間細胞膜近傍に偏在することを確認する。
以上の研究を実施することによって、“グリセロリン脂質を細胞膜へのアンカー素子として活用することで、レジデンスタイムの長い超長時間作用持続型医薬の創出できる”との作業仮説を実験的に証明することによって、新規創薬方法論確立への端緒を開く。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想に比較して、化合物合成がより順調に進展したため、消耗品(主に合成試薬)の購入費用が減額した。次年度の大量合成用の消耗品費用として繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
目的物の大量合成を予定しており、その費用に充てる。
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