研究実績の概要 |
分子設計:リン脂質部としては、原料の入手容易性と安定性を考慮し飽和型のジパルミトイルホスファチジル基を用いる。一方、トルテロジンの構造活性相関研究から、薬理活性を損なうことなく側鎖導入可能であることが知られている末端メチル部位をリンカー結合部とする。さらに、LPSにおいてリン脂質部が膜にアンカリングし、かつリガンド部が細胞膜受容体に効果的に結合するためには両部位の距離が鍵となることを考慮し、容易に鎖長を変えられるPEGをリンカーに用いて好適距離を探索する。以上の知見・考察に基づき、PEG数の異なる(n = 1,3,5,7,9,11)6種のトルテロジンをリガンドとするLOCを設計した。 合成:昨年度のラット脳組織ホモジェネートを用いたin vitroムルカリン受容体結合実験において、強力かつ極めて持続的な結合活性を示した PEG数が9 のLPCを選択し、100 mg程度合成した。この結果から、すでに開発した合成法は、大量合成にも十分に対応可能であることが明らかとなった。 in vivo評価:合成した持続性が優れるLPCについてin vivo評価を実施した。マウス膀胱内へLPC及びトルテロジンを投与し、30分後及び24時間後に膀胱を摘出、その組織のホモジェネートを作成し、残存化合物のムスカリン受容体への持続的な結合を経時的に評価した。その結果、30分後には両化合物のムスカリン受容体への結合おいてほとんど違いが観察されなかった。しかしながら、24時間後には、母化合物であるトルテロジンの受容体への結合がほぼ消失している一方、該当LPCにおいては顕著なトルテロジン受容体結合活性が保持されていることが判明した。 上記のマウス膀胱投与による本in vivo実験の結果は、LPCおいてリン脂質部が細胞膜にアンカリングすることで薬理効果が長時間持続することを十分に示すに値するデータである。
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