創薬化学研究において、ケイ素やリンなど第3周期以降の元素の活用は新たな医薬候補化合物の創製につながると考えられる。本年度は、ケイ素官能基の構造物性および構造活性相関を一般性を持って解析するための基本骨格として、(1)ビスフェノール構造を基盤とした解析、ならびに(2)シス2重結合のバイオアイソスターとしてのケイ素原子、を主題として昨年度までの研究を継続発展させた。 標的タンパク質として、エストロゲン受容体(ER)ならびにプレグナンX受容体(PXR)の核内受容体、加えてチュブリンを設定した。その中で、本年度は、ビスフェノール誘導体についてはリンカー部位の異なる種々の化合物を合成、その物性および生物活性を評価た。物性パラメータとして疎水性パラメータLogPo/wおよびフェノール性水酸基の酸解離定数pKaを、生物活性としてエストロゲン受容体(ER)αおよびβに対する活性を評価した。生物活性評価においては、ERのサブタイプによって逆の作用を示すという興味深いケイ素含有ビスフェノール誘導体を得た。 ケイ素誘導体に関する構造活性相関研究を通じて、ケイ素官能基の化学的性質と、幾何学的な構造的性質を分離して整理することがケイ素含有化合物の構造活性相関を理解する上で重要であるとの認識にいたった。本成果は、ケイ素やリンなど第3周期以降の元素を医薬に導入する試みが、構造展開の多様性、創薬におけるケミカルスペースの拡大につながる事を示したものと考えている。
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