研究課題/領域番号 |
16K15138
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 晋也 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (60389179)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 創薬化学 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
核内受容体は生命の根源的な活動を制御するリガンド依存的な転写因子であり、医薬開発の重要な標的である。従来、核内受容体に対しては、リガンド結合ドメイン(LBD)へ結合して受容体の転写活性を制御するリガンド化合物が多数開発されてきたが、近年、古典的なリガンドでは制御できない種々の機能が明らかになり、新たな制御法の開発が必要とされる。本研究では、核内受容体型転写因子の機能に対する新たな制御法の開発を目的として、古典的リガンドとは異なる新規標的部位および新規作用メカニズムを有する核内受容体モジュレーターの創製を行う。具体的標的として核内アンドロゲン受容体(AR)を設定し、人工翻訳後修飾のミミックを意図したARコバレントモディファイヤーの創製を行うとともに、核内受容体を含む転写因子の統合的な制御法の開発を発展的目標とする。 ARへのユニークな作用が報告されている化合物として、ジフェニルメタン誘導体EPI001が知られている。EPI001は、従来のARリガンドとは異なり、ARのLBDではなく、N末端ドメイン(NTD)に結合することが示されている。本研究課題では、EPI001を基盤として、その基本的な構造活性相関の検討と、ARの活性を様々に制御する化合物の創製を目指す。本年度においては、構造活性相関の把握を目的とした化合物展開を行い、コバレント結合部位の必要性を明らかにするとともに、骨格構造の構造展開から、EPI001と比較してより高活性の化合物の創製に成功した。得られた構造活性相関の情報は、新規ARモジュレーターのさらなる発展に有益な知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、既に構築した評価系を用い、ARのNTDに対して作用する化合物の構造活性相関研究を行った。具体的には、リード化合物であるクロロヒドリン構造を有するジフェニルメタン誘導体EPI001の構造を基盤として、1)コバレント結合形成をしていると考えられるクロロヒドリン部位の構造活性相関、2)化合物の生物活性に寄与していると考えられる機能性部位の構造展開、3)ジフェニルメタン骨格の構造展開、の3点について検討した。その結果、化合物のAR-NTD制御活性(転写亢進活性)にはコバレントな結合を形成しうる求電子性部位が必要なこと、および機能性部位の構造によりAR-NTD転写亢進活性の強度が変化することを見いだした。また、ジフェニルメタン構造をベンズアニリド構造に変換すると活性が減弱する一方で、ジフェニルエーテル構造にすると活性が増大することも見いだした。得られた構造活性相関の情報は、新規ARモジュレーターのさらなる発展に有益な知見である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に創製した高活性化合物について構造展開をさらに綿密に検討することにより、活性および選択性が向上した化合物の創製が可能になるものと考えている。一方、本研究課題は、ARの活性を様々に制御する化合物の創製を目指している。リード化合物は本研究者の評価系において転写亢進活性を示すが、転写亢進活性に必要な構造要素を明らかにし、その部位を精査することにより、転写抑制活性を有する化合物となる可能性が考えられる。今後は、高活性化と、転写抑制化合物の創製という2つの課題について注力していく。
|