研究課題
脳梗塞においては、発病直後の急性期における対応が予後を大きく左右する。脳梗塞中心部では血流が途絶え、神経細胞死が起こるが、その周囲部分(ペナンブラと呼ばれる)は血行が中程度で放置すると細胞死に至る。脳保護薬は急性期のペナンブラを細胞死から救うもので、極めて重要である。しかし世界的にみても、脳保護薬は我が国で開発されたエダラボンのみである。脳梗塞が起こった虚血脳が再開通すると多量の酸素が流入するため、ペナンブラ部位にフリーラジカルが急増する。すると脳神経細胞の細胞膜の脂質過酸化が起こり、細胞毒性をもったアルデヒドHNEが生成して脳梗塞が増悪する。脳保護薬エダラボンは、脳梗塞急性期に脳内に生ずるフリーラジカルを消去する脳移行性低分子化合物である。本研究は、脂質過酸化により生成する細胞毒性アルデヒドHNEを不活化するメカニズムで脳保護を行う新規化合物を創製するものである。具体的にはジペプチドであるカルノシンをリード化合物として反応性の高い誘導体の分子設計を行った。カルノシンの構造を修飾した誘導体を各種合成し、その機能を検討した。その結果、化合物はHNEを効率的に結合消去した。また、細胞にHNEを作用させて起こる細胞死を化合物は抑制した。更に、スナネズミの脳虚血モデルを用い、化合物が海馬細胞の脱落を防ぎ、脳保護作用を持つことを確認した。本研究はエダラボンとは作用機序を異にする新しい脳保護薬の創製につながるものである。
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