危険ドラッグの蔓延が大きな社会問題となり、事件や事故が多発している。このような被害を防止するためには、特に強力な作用を有する危険ドラッグの化学構造を明らかにし、真に危険な化学構造を有する物質を優先的に規制する必要がある。そこで本研究では、申請者らの有する有機合成技術により合成した標品、および既に所有する化合物ライブラリーを、神経細胞培養系、および覚せい剤を評価する際に用いるin vivo評価系により評価し、構造毒性相関を明らかにする。危険ドラッグの中でも特に強力な興奮作用を有するフェネチルアミン系化合物に着目し、作用発現に必要な化学構造(トキシコフォア)を同定することを目的として研究を行った。 1-(1-phenylpropan-2-yl)piperidineメチル基の側鎖を変化させたものを中心に化合物を合成し、in vitro作用としてドパミン再取り込み阻害作用、ドパミン放出活性を測定した。また、in vivo作用として、自発運動量の測定、および精神依存性を調べる条件づけ場所嗜好性試験(CPP試験)を行った。その結果、各合成化合物の自発的運動量の大小、精神依存性の強弱、ドパミン再取り込み阻害作用の強弱にはそれぞれおおよそ正の相関が認められた。また、側鎖がプロピル基のときに自発的運動量および精神依存性が最大となった。また、これらの結果より、側鎖がプロピル基のときの自発的運動量および精神依存性には、ドパミン再取り込み阻害作用が関与する可能性が示唆された。
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