研究課題/領域番号 |
16K15148
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石井 祐次 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (90253468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フェノバルビタール / マウス / UDP-グルクロン酸転移酵素 |
研究実績の概要 |
フェノバルビタールによる新規遺伝子発現調節機構を明らかにする一環として、本研究の端緒となった、発現変動のあったUDP-グルクロン酸転移酵素 (Ugt)について検討を行った。マウス肝臓に発現するすべてのUgt分子種について、昆虫細胞を用いたバキュロウイルス発現系を用いて、各々の分子種を発現させた。細胞から、さらにミクロゾーム分画を得て、包括的に特性評価を行った。これまで、マウスの肝臓のUgtについては、個々の分子種の機能を詳細に調べた例がない。これは、フェノバルビタールにより発現変動する分子種が分かったとしても、その生体影響を理解するのが難しいことを意味する。発現させたいずれのUgt分子種も4-メチルウムベリフェロン (4-MU)抱合活性を有しており、いずれも機能を保持した形で発現していると考えられた。本研究では、特にUgt2bサブファミリーについて検討を行った。エストラジオールの17-beta位水酸基の抱合活性は、高基質濃度では多くの分子種に認められたが、低基質濃度では、Ugt2b1および2b5のみに著しく高く、これらの酵素が生体内で17beta-ステロイド代謝に関与することが強く示唆された。クロラムフェニコールの抱合活性もこれら二つの分子種に高く、他の分子種には全く認められなかった。一方、エストラジオールの3位水酸基に対する抱合活性は、Ugt1aサブファミリー、特にUgt1a1に活性が高かった。医療麻薬モルヒネの抱合活性については、複数の分子種に認められたものの、マウスの主要なモルヒネ抱合酵素はUgt2b36であることが示唆され、これがヒトUGT2B7の対応分子種であると推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェノバルビタールによる調節を受けるUgtについては、すでに報告があったが、これらの機能はほとんど分かっていなかった。本研究を通じて、マウスのUgtの特性評価が進んでおり、フェノバルビタールによる薬物代謝酵素誘導の新規誘導機構の解明につながると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、マウスの全Ugt分子種の機能を評価し、ここまでのデータと併せて、包括的に評価、考察を行う。また、in vitroおよびin vivoでの検討を通して、フェノバルビタールによる薬物代謝酵素誘導の新規機構に関与する因子を同定し、検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には、動物舎での感染事故が起こり動物実験に制約があった。その実験の分に係る経費が平成29年度使用額として生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の経費と合わせ、前年度に使用しなかった動物実験の経費、動物および飼料に充当する。
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