研究実績の概要 |
本研究の所期には、シトクロムP450 3a subfamily (Cyp3a)欠損マウスを購入して実験を行う計画をしていたが、発売元のタコニック社が、マウスの供給時に受精卵からのリカバーのための費用を必要とすることから、本研究費の範囲で実施することが困難となった。代替法として、H29年度より、Crisper-Cas9法を用いて、シトクロムP450 3A欠損細胞の作成を目指して検討を行って来た。この方法では、CYP3A4, CYP3A5およびCYP3A7を同時に欠損出来るガイドRNAをデザインし、計画に取り組んだ。H29年度から継続して行った検討により、H30年度に、HepG2細胞の片方のアレルの欠損(ヘテロ欠損)細胞を得た。しかし、これでは、当初の目的の研究に用いることは出来ないため、本研究の所期の目的を達成するために、両方のアレルを欠損した細胞(ホモ欠損細胞)を得る取り組みを続けた。残念ながら、この研究費受領期間終了時点においてはホモ欠損細胞は得られていない。本研究では、ヒトCYP3Aの全欠損作成を目指したが、一分子種ずつの欠損を積み重ねるやり方も今後検討を行う必要がある。また、フェノバルビタール処理マウスにおける血液および肝臓のメタボローム変動についての検討も行った。これら変動した物質の中に、当初仮説の条件に合致するものがあると考え、検討を続けている。これらの中には、ステロイドやその代謝物も含まれており、それぞれの性質については、今後、詳細な検討を要する。更に、本研究を遂行するに当たって、必要となったマウスの全てのUDP-グルクロン酸転移酵素 (Ugt)分子種の包括的解析を行うことにより、汎用医薬品であり、かつ高用量摂取による肝毒性が問題になっているアセトアミノフェン代謝の責任酵素がUgt2b34であることを明らかにすることが出来た。
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