研究課題/領域番号 |
16K15150
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
中西 剛 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (50303988)
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研究分担者 |
永瀬 久光 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40141395)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リポカリン / メタボリック症候群 / CRISPR/Cas9 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
本研究では、リポカリン分子がネットワークを構築し、糖脂質代謝系の制御機構を担っているという作業仮説のもと、補体(C8)の構成成分の一つとして見出された分子でありながら、未だその機能に不明な点が多いリポカリン分子のC8γに着目し、CRISPR/Cas9システムを用いて独自に作製したC8γ欠損マウスを用いてその機能解明を試みている。今年度は、C8γ欠損マウスの変異部分の導入の確認と、マウスのライン化を中心に行った。 C8γは7つのExonから構成されているが、今回はExon2または5のそれぞれに変異を導入できる二種類のsgRNAを用いて欠損マウスの作製を行った。Exon2に変異を導入して得られた4匹のファウンダーマウスでは、いずれもExon2中に2塩基の欠失が確認された。一方で、Exon5に変異を導入したマウスについては、Exon5から下流のイントロン部分にかけて302bpの欠失が認められたものが確認された。またこれ以外にもExon5中で11塩基が欠失したものや、3塩基が欠失して新たに13塩基が挿入されたものが確認された。いずれの7匹ともにF1世代でも同様の変異が確認されたことから、生殖細胞列で変異が維持されているものと判断し、各マウスのライン化を行った。さらに302bpの欠失が認められたものについてホモ化を行い、解析を行ったところ、ホモ欠損マウスでは雌雄共に肝臓におけるC8γの発現が完全に消失していた。また4週齢から12週齢まで通常食を与えて野生型マウスと比較検討を行ったところ、体重変化に特段の差は認められず、12週齢における肝臓重量および脂肪重量にも変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、CRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子欠損マウスを作製しているため、昨年度はC8γ欠損マウスの表現型を解析する前に、ゲノム改変状態の確認と各マウスのライン化を中心に行った。その結果、いずれのファウンダーマウスもライン化を行うことができ、正常に繁殖できている。またこれらのマウスの中には、当該遺伝子部分に10塩基から302塩基程度の欠失が起こっているものもあり、遺伝子型の同定も容易に行えることから、次年度以降の実験に十分に用いることができるマウスラインを確立することができたと言える。以上の理由から、概ね計画通り進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、確立したC8γ欠損マウスのライン1を用いて、全身でのC8γおよび他のリポカリン分子の発現状態を確認するとともに、高脂肪食負荷などを行った際の表現型の解析を行う。また表現型に差が認められた場合には、各種糖質脂質関連因子の発現状態の解析や、C8γ欠損胎生線維芽細胞を用いた脂肪細胞分化誘導状態の解析などを行うことで、C8γの糖脂質代謝系における役割の全容解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では独自に作成したC8γ欠損マウスを自家繁殖して実験に用いるが、今年度は非常に繁殖効率がよく、また他のプロジェクトでもこのTGマウスを用いて実験を行っていることから、動物実験や維持管理における費用の大部分を節約することができた。また実験に用いる試薬も既存のもので十分にまかなうことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
もともと本学の実験動物の維持管理費が高額であるため、支給された研究費からすると当初の計画では使用する動物の数や実験項目がかなり制約されていたが、予算に少し余裕ができたことから、C8γ欠損時における他のリポカリン分子の代替効果を検討するために、独自に作製しているMajor Urinary Protein Type 1(MUP1)トランスジェニックマウスと交配させた、C8γ欠損/MUP1過剰発現マウスを作製し、このマウスの表現型の解析を行うことで、リポカリンネットワークの解析を行いたいと考えている。
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