研究課題
インフルエンザA型およびB型ウイルスやその感染細胞の表面に発現するシアリダーゼの酵素活性の存在部位を簡便迅速に蛍光イメージングするプローブを開発した。抗インフルエンザ薬(シアリダーゼ阻害剤)に耐性化したインフルエンザA型ウイルスやその感染細胞は、薬剤感受性ウイルスのシアリダーゼ活性が阻害される薬物濃度下で、シアリダーゼ活性を維持する。抗インフルエンザ薬とイメージングプローブを併用することで、薬剤耐性ウイルスやその感染細胞を選択的に蛍光イメージングできる方法を確立した。薬剤耐性ウイルス株と薬剤感受性ウイルス株を混合感染させた細胞において、薬剤耐性ウイルス感染細胞を選択的に蛍光イメージングした。さらに本イメージングは生細胞で可能なため、蛍光可視化された感染細胞から薬剤耐性ウイルス株を高効率に単離できた。各薬剤に対する既知の耐性化変異を導入したシアリダーゼ遺伝子の発現細胞においても、各薬剤に対する耐性化を選択的に蛍光イメージングできた。シアリダーゼ蛍光イメージングを利用して、薬剤耐性インフルエンザA型ウイルス感染細胞の選択的な蛍光イメージングと薬剤耐性ウイルス株の高効率単離についての方法を論文や総説で報告した。シアリダーゼが認識する主要なシアル酸分子種はN-アセチル体とN-グリコリル体に大別される。シアル酸分子種のN-グリコリル体に対するシアリダーゼ活性を簡便に測定する蛍光基質を使用して、ウマとヒトのインフルエンザA型ウイルスのシアリダーゼ活性の基質特異性を迅速に測定する方法を確立した。N-アセチル体におけるシアリダーゼ活性を基準にすると、ウマウイルスのN-グリコリル体に対するシアリダーゼ活性がヒトウイルスと比較して極めて低いことが分かった。本法や結果を論文で報告した。
2: おおむね順調に進展している
シアリダーゼ蛍光イメージングプローブを利用して、抗インフルエンザ薬(シアリダーゼ阻害剤)に耐性化したインフルエンザA型ウイルスの感染細胞を選択的に蛍光イメージングする方法、および薬剤耐性ウイルス株を高効率に単離する方法を確立して、これらの結果を論文や総説で報告した。また、シアリダーゼ活性を蛍光化する技術研究の過程で、シアル酸分子種のN-グリコリル体に対するシアリダーゼ活性を簡便に測定できる方法を確立し、ウマインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスにおいて、シアリダーゼ活性のシアル酸分子種に対する基質特異性の結果を論文で報告した。このようにシアリダーゼ活性の蛍光測定や薬剤耐性検出における方法論を報告できたことは学術的成果であり、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。酵母にてシアリダーゼを発現させて薬剤耐性シアリダーゼの選択的蛍光イメージング技術を確立する目的で、出芽酵母とピキア酵母のシアリダーゼ発現系を検討してきた。GFPを発現させた出芽酵母コロニーの蛍光検出により、酵母を使用したタンパク質発現系を確認した。インフルエンザウイルスのシアリダーゼ発現ベクターを導入した出芽酵母にて、高いシアリダーゼ活性の発現が見られた。この酵素活性は、インフルエンザ特異的シアリダーゼ阻害剤ザナミビルにより阻害されたことから、インフルエンザウイルスに由来するシアリダーゼ活性であることが確認された。酵母によるシアリダーゼ活性の発現が確認されたことからも、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
出芽酵母あるいはピキア酵母を使用してインフルエンザA型ウイルスのシアリダーゼを、酵素活性を有するタンパク質として大量に発現できるようにする。薬剤耐性シアリダーゼと薬剤感受性シアリダーゼを発現する酵母を混合し、抗インフルエンザ薬とプローブの併用により薬剤耐性シアリダーゼを発現するコロニーを選択的に蛍光イメージングする。蛍光化コロニーのシアリダーゼ遺伝子の薬剤耐性変異を確認する。薬剤感受性シアリダーゼ遺伝子にランダム変異を導入し、酵母へ形質転換する。薬剤耐性シアリダーゼを発現するコロニーを蛍光イメージングし、シアリダーゼ遺伝子配列から未知の薬剤耐性変異を探索する。
[新聞報道]「耐性ウイルス判別試薬販売 インフルエンザ 県立大などが研究」朝日新聞(静岡版)、p. 20、2016年4月7日(木)朝刊;「インフル紫外線で確認 広島国際大チーム ウイルス反応試薬」中国新聞、2016年5月9日(月)[研究代表者の受賞]一般財団法人 バイオインダストリー協会 2016年度化学・生物素材研究開発奨励賞
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