研究実績の概要 |
クレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損型のクレアチン脳欠乏症では、脳内のクレアチンレベルが著しく低下し、小児発達期において中枢神経障害を呈する。そこで、SLC6A8欠損型クレアチン脳欠乏症の治療には、神経発達期において脳内クレアチンレベルを回復する方法論を確立することが必須である。具体的には、クレアチン合成系を活性化するか、クレアチンプロドラッグを血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)を介して、脳内に輸送する方法があげられる。そこで本研究では、発達脳におけるクレアチン合成システムの解明と、小児発達期のBBBにおいて、クレアチンプロドラッグを輸送可能な輸送体分子を同定することを目的とした。本実験は、関係機関の倫理委員会の承認のもと行った。マウス発達期の脳において、クレアチン合成酵素Guanidinoacetate N-methyltransferase (GAMT)は、生後7-14日までは、神経・グリア前駆細胞、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトおよびペリサイトに広範に発現するが、成熟に伴って神経細胞及びペリサイトにおける発現は著しく低下した。従って、発達に伴って神経細胞は、循環血液またはグリア細胞由来のクレアチンをSLC6A8を介して取り込む必要があることが示唆された。さらに、ラット発達期BBBにおいてタンパク質発現量が増大する塩基性アミノ酸トランスポーターのサブタイプを同定し、脳毛細血管内皮細胞における血液側膜及び脳側膜における局在性を明らかにした。以上の結果から、脳内クレアチンレベルを回復させるためには、クレアチン合成系を活性化する方法ではなく、発達期BBBで輸送活性化される塩基性アミノ酸トランスポーターを輸送体として、クレアチンプロドラッグを創製することが有用であることが示された。
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