従来、受動的に細胞膜を通過すると考えられてきた脂質分子が、輸送体(トランスポーター)を介して輸送されることが明らかとなって久しい。しかし、長い研究の歴史を持つ脂質の生理機能や代謝経路の場合とは異なり、存在が推定される脂質および脂溶性薬物の体内・細胞内動態制御機構の多くは未解明のままである。申請者は、生理的に重要な役割を有する脂質・脂溶性薬物の動態制御因子を同定することを目指し、研究を進めている。本研究の進展により、脂質や脂溶性薬物の動態制御機構のさらなる理解が達成されるとともに、脂質異常症の克服に向けた新たな創薬標的の同定に繋がることが期待される。
研究開始2年目にあたる本年度(平成29年度)には、以下の点に関する研究を進めた。 ●消化管からのコレステロール吸収において重要な役割を果たす、Niemann-Pick C1-like 1 (NPC1L1)やscavenger receptor class B type I (SR-BI)などの輸送体群が、脂溶性ビタミンであるビタミンEやビタミンKの吸収においても重要な役割を果たす。 ●フラボノイドの一種であるルテオリンは、転写活性調節を介して、NPC1L1の発現量を負に制御する可能性がある。 ●コレステロールの消化管吸収、胆汁排泄に関わる、NPC1L1やATP-binding cassette transporter G5 (ABCG5)/ABCG8などのトランスポーター群が、生活習慣病の発症・進展に深い関わりを有する。
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