研究課題/領域番号 |
16K15161
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 清仁 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (70166479)
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研究分担者 |
渡利 彰浩 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (80452465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経皮吸収 / Homoharringtonine / Tight junction / Claudin / 表皮バリア |
研究実績の概要 |
現在、ペプチド、核酸、抗体などのバイオ医薬品は医薬品産業界において大きな成長を遂げているものの、その投与法のほとんどは注射による投与に依存しているため、経皮投与を含めた非侵襲性投与法の開発が切望されている。本研究は、表皮のタイトジャンクション (TJ)バリア機構の主要分子claudin (CLDN)に着目し、これまでに申請者らが同定したCLDNバリア機能制御活性を有するHomoharringtonine (HHT)を利用することで、表皮TJバリア制御による初めての経皮吸収促進法の開発を目指すものであり、H28年度は以下の成果を得た。 ヒト初代表皮培養細胞NHEK細胞を利用し、HHTによるTJバリア制御活性を解析した結果、上皮TJバリア機能の指標となる膜電気抵抗値がHHT濃度依存的に低下することが明らかとなった。また、モデル薬物である分子量4 kDaのFITC-dextran(FD-4)の細胞間隙透過性が亢進していることも確認された。バリア機能低下時のTJ構成分子を解析した結果、表皮TJバリア機能を担うclaudin-1, claudin-4, occludinの発現低下が観察された。また、TJバリア低下作用が確認された濃度では細胞障害性は確認されなかったことから、HHTは表皮TJバリア減弱作用を示すことが明らかとなった。続いて、HHTによるマウス皮膚での物質透過性亢進作用を検証するため、分子量4kDa, 10kDa, 20kDaのモデル分子を用いて検証した結果、HHTは分子量10kDaまでの分子の皮膚透過性亢進作用を示すことが明らかとなった。以上、本年度は、HHTによる表皮TJバリア制御活性の解析を中心に研究を進め、ほぼ目標を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、HHTによる表皮TJバリア制御活性の解析を目標とし、HHTが表皮TJバリアを構成するclaudinやoccludinの発現低下を誘導することで、表皮バリア減弱作用を示すことを示唆する結果が得られた。また、当初H29年度に予定していた、高分子モデル薬物の透過性試験の解析にも着手することができ、計画を上回る進行がなされているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は目標であるHHTによる表皮バリア制御メカニズムの解析がおおむね達成できたため、今後はマウス皮膚組織でのHHTの吸収促進効果を中心に解析する。特に、HHTによるマウス皮膚におけるTJ構成分子への影響、ならびにモデル分子ではなくバイオ医薬品での経皮吸収促進効果について検証する予定である。
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