研究実績の概要 |
現在、ペプチド、核酸、抗体などのバイオ医薬品は医薬品産業界において大きな成長を遂げているものの、その投与法のほとんどは注射による投与に依存しているため、経皮投与を含めた非侵襲性投与法の開発が切望されている。本研究は、表皮のタイトジャンクション (TJ)バリア機構の主要分子claudin (CLDN)に着目し、これまでに申請者らが同定したCLDNバリア機能制御活性を有するHomoharringtonine (HHT)を利用することで、表皮TJバリア制御による初めての経皮吸収促進法の開発を試みた。 ヒト初代表皮培養細胞NHEK細胞を用いた検討においてHHTはTJバリア減弱作用を示し、バリア機能が低下した細胞では表皮TJバリア機能を担うCLDN-1, CLDN-4, occludinの発現低下が観察された。続いて、HHTによるマウス皮膚(角質層は除く)での物質透過性亢進作用を検証するため、分子量4k, 10k, 20kのモデル分子を用いて検証した結果、HHTは分子量10kまでの分子の皮膚透過性亢進作用を示すことが明らかとなった。そこで、核酸医薬品候補の1つである分子量約9kのヘテロ核酸 (HDO)が、HHTにより経皮吸収可能かどうか検証した。貼付24時間後のマウス肝臓を回収、赤色に蛍光修飾したHDOの肝への移行を調べた結果、HHTにより表皮から吸収されたHDOが肝臓にまで送達されることが観察された。その際、HDOターゲット遺伝子(ApoB)の遺伝子発現抑制効果も確認された。以上の結果から、HHTは表皮TJバリアを減弱化させることにより表皮バリアの透過性を高めることが確認され、高分子薬をも透過させる新たな経皮吸収促進法としての可能性を有することが示唆された。
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