研究課題
嚢胞性線維症 (CF) は,Cl-イオンチャネルであるCFTRの遺伝子変異によって生じる難治性の遺伝性疾患である.これまでに,CFTRの遺伝子変異によるCFTRの機能破綻自体が種々の遺伝子の発現を変動させることが明らかになっているが,その分子メカニズムについては不明な点が多い.このような背景の中,興味深いことに,CF患者気道上皮組織を用いたin vivo検体解析から,CF患者で発現変動する lncRNAが数種類報告されたが,1) このようなlncRNAの発現変動が,気道上皮細胞レベルで引き起こされるのか,また,2) CFTR機能破綻に依存して発現変動するのか否か,さらには,3) 変動したlncRNAがCF病態形成においてどのような役割を担うのかについては,不明である.そこで本研究では,健常人由来気管支上皮細胞 (16HBE14o-),CF 患者由来気管支上皮細胞 (CFBE41o-),また,野生型CFTRをレスキューしたCFBE41o-を用いて,機能破綻CFTRの下流で発現変動する全転写産物,その中でも特に lncRNA に着目し検討を行った.その結果,野生型 CFTR を持つ 2 つの細胞と比較して CFBE41o- において発現変動する lncRNA を複数同定した.次に,その中でも特に発現上昇率の高かったlncRNA Xに着目し,その機能について検討を行った.その結果,lncRNA Xのノックダウンは数多くの遺伝子の発現を変化させ,特に顕著に変動したpathwayに関わる遺伝子について,そのmRNA量をQ-RT-PCR法で確認したところ,アレイの結果と相関するデータが得られた.一方,lncRNA X過剰発現によっては,下流の遺伝子発現変動は認められなかったことから,lncRNA Xは他の発現変動因子と協調して,下流の遺伝子の発現を調節することが示唆された.
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Cell Chem Biol.
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http://molmed730.org/index.html