研究課題/領域番号 |
16K15165
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
白坂 善之 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (60453833)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬学 / 薬物動態学 / 経口吸収 / 消化管 / 代謝酵素 / トランスポーター / 培養細胞 |
研究実績の概要 |
現在、医薬品開発の効率化を目的として、培養細胞や人工脂質膜を用いたin vitroでの薬物吸収性評価法が広く適用されている。しかし、いずれの評価系についても、実際の小腸における絨毛上皮構造や生理環境の影響を簡略化し、迅速性と簡便性を優先させた単純なシステムとして確立されているため、高精度な薬物吸収性予測を行うことは事実上不可能となる。そこで本研究では、高精度な薬物吸収性予測を可能にするin vitro小腸絨毛上皮モデルの構築を最終的な目的として、まず、モデル細胞の選定ならびに培養法の構築に関する詳細な検討を行った。 小腸絨毛上皮モデルの構築にあたっては、その細胞モデルの選定基準として、小腸モデル細胞として汎用されているCaco-2細胞に着目して種々検討を行った。その結果、Caco-2細胞には、重要代謝酵素であるCYP3A4の発現が著しく低いこと改めて示され、他のバックアップ細胞を獲得する必要性が示唆された。そこで、より妥当なモデル細胞を獲得することを目的として、CYP3A4をMDCKII細胞に遺伝子導入することによりCYP3A4安定発現系 (MDCKII/CYP3A4細胞)の作成を試みた。CYP3A4基質であるmidazolamおよびtestosteroneを用いた種々検討から、MDCKII/CYP3A4細胞が代謝機能を保持した有用な膜透過モデルとなる可能性が示された。一方、灌流培養法を確立するにあたり、回転子を利用した予備試験を試みることにした。しかし、回転子による過剰な加温環境が生じ、培地に想定外な熱が加わったことで適切な細胞培養が困難となった。 以上、CYP3A4に着目したバックアップ細胞(モデル細胞)の作製が進行する一方で、適切な灌流培養法を確立するための予備試験を再考する必要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Caco-2細胞におけるCYP3A4発現が著しく低いことが確認されたため、より妥当なバックアップ細胞(モデル細胞)としてCYP3A4を強制発現させたMDCKII/CYP3A4細胞の作製を行っている。小腸モデル細胞の選定/作成にあたる本検討に関しては、おおむね順調に進展している一方で、灌流培養デバイスの作製に予想以上に苦戦している。これは、予備検討として行おうとしている回転子を利用した細胞刺激を試みた際に、過剰な加温環境が生じ、培地に想定外な熱が加わったことで適切な細胞培養が出来なくなってしまったことにある。灌流培養法およびそのデバイス作製にあたっては、細胞への物理的刺激の影響を十分に考察した上で行うことが効率的であると考えるため、本予備試験は本研究の根本となる可能性がある。したがって、今後も引き続き、手法を変えた同様の予備試験を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度と同様に、灌流培養法およびそのデバイス作製を目的とした、詳細な検討(細胞に物理的刺激を与えるための工夫と考察)を行う。 これと並行して、CYP3A4に着目したバックアップ細胞(モデル細胞)の作製をさらに進め、1) Real-time quantitative PCR法によるmRNA発現の相対定量、2) Western blotting法によるタンパク質発現の相対定量、3) LC-MS/MSによるタンパク質発現の絶対定量、4) 免疫組織化学染色法によるタンパク質の発現局在、5) 基質薬物などを用いた活性評価などに基づいて、① 代謝酵素 (CYP3A4、UGT1A)、② トランスポーター (吸収型、排泄型)、③ ムチン (分泌型、膜結合型)、④ アクアポリンなどに着目した検討を行う。これらの検討結果に基づいて、最終的にCaco-2細胞との比較からその妥当性を考察する。 以上の検討成果を統合し、可能であれば、作成細胞を用いて灌流培養に計画を進め、小腸上皮細胞モデルの構築を試みる。
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