• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

脳組織タンパク質の質量分析イメージングの高感度化に向けた技術開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K15167
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

川岸 将彦  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60323606)

研究分担者 寺田 純雄  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00262022)
齊藤 健太  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60374659)
佐藤 啓介  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60644044)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード質量分析 / 顕微鏡技術 / 脳・神経 / 細胞・組織 / タンパク質
研究実績の概要

1. 研究成果の内容: 質量分析イメージング(MSイメージング)とは、組織切片上で直接に質量分析を行うことで、生体分子や投与薬剤を直接検出し、生体組織上における目的化合物の分布を画像として表示する技術である。脳組織のMSイメージングにおいて、脂質の分布情報は得られているが、タンパク質の解析は進んでいない。微量のタンパク質は、組織の中にある多種類多量のタンパク質に埋もれてしまい、同定することが困難だからである。この研究は、MSイメージングにおけるタンパク質の検出の効率を上げて、より多くのタンパク質の局在情報を得るための技術開発が目的である。昨年度に引続き、組織切片上のタンパク質を、位置・形態を保ったままブロッティング膜に転写し、それを質量分析で同定する手法の改善を行っている。平成30年度は、蛋白の同定効率を改善するために、組織内のタンパクの化学処理、共存する疎水性の脂質の処理などの条件検討を進めた。
2. 意義、重要性: 従来の生物学の研究に於いては、タンパクの局在、分布情報を求める時には、個々のタンパク毎に、抗体を作成したり、標識タンパクを用意したりして、個々に調べるのが主な方法である。これは、高感度であり、確立された安定な手法であるが、一つずつしか出来ないものであった。近年では、組織に存在する分子を網羅的に同定解析する手法が開発され、それによって多くの新しい知見が得られて来ているが、その中でも、タンパクの局在情報を網羅的に同定する方法は遅れている。この研究は、このタンパクの局在情報を網羅的な同定を可能にするための、技術開発が目的である。平成29年度に、タンパク質の膜転写における位置・形態の保持を改善した事は、組織切片のタンパク質の局在情報を保持したままMSイメージングする上で、役に立つものであると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の実施計画に従い、組織切片の処理条件の検討、膜転写条件の検討、転写膜の表面処理の検討を進めている。組織切片の処理条件の検討は、膜転写の後のタンパク質の同定効率を目安に行った。平成29年度までに、化学的処理の種類によって、タンパクの転写効率はいろいろ変化させられたが、タンパクの同定効率は、必ずしも転写量だけでは定まらなかった。膜転写条件に関しては、電気的条件、緩衝液を振って、高速な転写を行う事によって、転写効率を上げ、同時に位置、形態情報の保全を改善する事が出来た。転写後の膜表面の化学的性状が、その後の同定の効率に大きく影響する事が分かった。平成30年度は、見掛け上の転写効率や形態情報の保全が改善したのに、タンパクの同定効率が伸び悩んでいるので、その対策を進めている。神経組織は脂質を多く含むため、そこからタンパクを膜に転写する際に、多くの疎水性の脂質が膜に付着するが、それがタンパクの同定に大きく干渉する要因となっている。そこで、組織の前処理や転写条件などの検討によって、転写膜に付着する脂質の量を減らし、タンパクの同定効率を改善しようとしている。また、転写膜の表面の疎水性を修飾するために、表面加工によるイオン化率の向上も検討している。現在のところでは、転写効率や形態情報の保全が改善したのに、同定効率が当初の想定ほどの結果には達していない。その点で、"やや遅れている"と自己評価した。

今後の研究の推進方策

平成30年度の実験計画に従い、組織切片の処理条件の検討、 転写条件の検討、転写膜の表面処理の検討を、前年度から継続する。現在のところ、神経組織から転写膜に付着してくる疎水性の脂質が、タンパクの同定効率に影響を与える要因になっている。そこで、転写膜に付着する脂質の量を減らすために、組織の前処理や転写条件などの検討を継続する。また膜に付着した脂質を、転写後に溶媒の抽出する条件も検討し、それによって、タンパクの同定効率を改善を試みる。また、通常の PVDF膜ではPVDFの導電性が低いために、また、PVDFとタンパク質との疎水的結合が強すぎるために、イオン化率が低く、質量分析をする効率・感度の面で不利であるので、表面加工によるイオン化率の向上を目指す。こうして、種々の条件で転写したタンパクでMSイメージングを行い、それぞれを比較して検討する。同定効率の改善が見られたら、種々の組織からのMSイメージングを行って、更に手法の改善を行いたい。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 平成30年度の研究計画に従い、種々の条件検討を行ったが、当初の想定よりも時間がかかっていることと、及び、研究室内の冷凍保管庫の使用状況の推移をみて、当初に予定していた大型freezerの購入を繰り越したことのため、次年度使用額が生じた。
(使用計画) 計画通りに、組織切片の処理条件、転写条件、転写膜の表面処理などの検討を続ける。実験により、保管する試料の増加に応じて、予定していた冷凍保管庫を購入する予定である。

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi