本研究では、オリゴデンドロサイトの異常により神経症状を示す遺伝子変異マウス(proteolipid protein (PLP)遺伝子に点突然変異を持つjimpyマウスなど)の脳内炎症について、まず、その病態の経時的な変化を明らかにして、さらに、脳内炎症の程度を変化させることにより、神経症状にどの程度の変化(効果)があるのかについて解析を行う。並行して、オリゴデンドロサイトの分化因子のノックアウト (KO)マウスを作成し、脳内炎症の視点も含めてその表現型解析を行う。 平成30年度は、以下の実験を行なった。 まず、jimpyマウスのC57BL/6バックグランドへの戻し交配が完了し、そのマウスにおける脳内炎症を組織学的に解析を行なった。また、翻訳開始因子に対する活性化因子をコードする遺伝子の変異により、グリア細胞に異常を持つマウスとjimpyマウスを交配し、二重変異マウスを作成した。雌の二重変異マウス(活性化因子の変異アリールがホモ接合体、jimpyアリールはヘテロ接合体)では、症状が悪化することが明らかとなり、この病態についてのさらに詳細な解析を継続中である。 オリゴデンドロサイトの分化因子のKOマウスの解析では、分化OLの段階でCre組換えを起こすマウス、およびオリゴデンドロサイト前駆細胞の段階でCre組換えを起こすマウスの2系統のCreマウスを用いてコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作成し、前者は生後数週で致死になること、後者は出生直後に致死になることがわかった。これらのマウスについても、表現型解析を行い、現在、論文作成の段階にある。
|