研究課題/領域番号 |
16K15170
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木山 博資 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00192021)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動神経 / 疲労 |
研究実績の概要 |
低水位のケージを用いたラット慢性ストレスモデルでは、脳内で様々な変化が生じ、それが内分泌系をはじめとした恒常性の維持機構に影響を及ぼすことを我々は発表してきた。本研究はこのモデル動物で見られる異常な疼痛発症のメカニズムを明らかにすることをめざしている。このモデル動物を用いた実験では脊髄前角の運動ニューロンの一部にATF3陽性細胞が認められ、その周囲を取り囲むようにミクログリアの集積が認められた。ATF3は通常脳内の神経細胞には発現していないが神経細胞の軸索損傷や過活動に応答して障害神経細胞特異的に発現すると考えられる。このことから、慢性ストレス負荷により脊髄前角の運動ニューロンの一部は過活動状態になっていることが予想される。これらの運動ニューロンは主に抗重力筋であるヒラメ筋を支配するアルファ運動ニューロンであった。また、同様にこれらの低水位を用いたラット慢性ストレスモデルでは、一部の交感神経節にもATF3陽性反応が認められた。このことは交感神経系の過活動も関与していることを示唆している。 また、最近我々が新たに開発したATF3(GFPmito/Cre)マウスは、ATF3のプロモーター下でCreリコンビナーゼとミトコンドリアを標識するGFPを発現する。このトランスジェニックマウスを用い慢性ストレスを負荷すると、過活動状態の神経細胞のミトコンドリアを特異的に標識することが期待される。そこで、このトランスジェニックマウスを用いて、プレリミナリーな実験を行なった。その結果一部の運動ニューロンのミトコンドリアがGFP標識され、本トランスジェニックマウスの有用性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において重要なツールとなるATF3(GFPmito/Cre)トランスジェニックマウスの本実験における作動状況が当初懸念されていた。しかし、28年度の研究からトランスジェニックマウスが本慢性ストレス研究に十分利用できることが明らかになった。また、慢性ストレスによってATF3の発現が認められた交感神経節については、L1~S2の広汎な神経節を検討したが、L3やL4のレベルで最もATF3陽性細胞が多く認められた。この局在の意義については今後の課題であると考えられる。一方、本モデルではL4やL5の後根神経節で、交感神経節由来の神経の侵入が認められること、またこれらの後根神経節ではATF3陽性細胞が多く認められた。以上のことから、慢性ストレス刺激により後根神経節と交感神経節がお互いに連関しており、異常な痛みの発症における交感神経系の関与が示唆されるデータが得られた。本研究の目標である筋の過緊張状態と疼痛を結びつける上で、交感神経の関与を示す重要な知見が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ATF3(GFPmito/Cre)トランスジェニックマウスについては、ストレス負荷の条件設定を調整する必要がある。また、線維筋痛症モデル作成ための実験装置の温度変化設定は、外気温や湿度などの状況などにより一定しないことが有るため、これら装置の改良が必要となる。加えて、現在ATF3(GFPmito/Cre)トランスジェニックマウスにはいくつかのラインを有しているが、本実験に最も適したラインの選択も出来れば行なった方が良いと考えている。今後、ATF3(GFPmito/Cre)トランスジェニックマウスを用いた実験系は、慢性ストレスにより影響を受け過活動となる交感神経系や他の中枢神経細胞の同定にも繋がる可能性があり、末梢のみならず中枢神経系における局在についても研究を発展させることが可能である。これにより、中枢内の慢性ストレス回路の一部の同定に繋がることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に論文投稿発表を予定していたが、発表に至っておらず、そのための英文校正や投稿料、印刷費などを次年度経費に充てる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に28年度に得られた成果を投稿発表する予定であり、このための経費にあてる。
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