本研究の目的は、光応答性DNAをイオンチャネルの架橋剤として利用し、カリウムチャネルKcsAのチャネル間距離がチャネル機能に及ぼす影響について明らかにすることである。光応答性DNA とは、DNA鎖中に光応答性分子であるアゾベンゼンを導入し、配列によっては常温・常圧における光刺激のみで二重鎖形成と開裂の制御が可能な人工核酸のことである。光応答性DNAとチャネルを化学的に結合するために、光応答性DNAの片末端をマレイミド修飾し、KcsAチャネルの細胞外ループにシステインを導入した。システインの導入箇所は細胞外ループ中の三箇所を検討し、最も反応性が高いものを選択した。センス鎖、もしくはアンチセンス鎖の光応答性DNAとKcsAチャネルを結合した後、それぞれのDNA修飾チャネル溶液を等量で混合し、4℃で16時間程度静置してDNAの二重鎖形成によってチャネルを二量体化した。この試料をSDS-PAGEで解析した結果、センス鎖修飾チャネルとアンチセンス鎖修飾チャネルが共存したときのみ二量体化が確認されたことから、DNAの二重鎖形成によるチャネルの二量体化に成功したと考える。さらに、二重鎖を開裂する紫外線を照射すると、チャネルの二量体が90%程度減少し、単量体に変化した。単量体にしてから、再度二重鎖を形成する可視光を照射すると、再び二量体化が確認された。以上より、光応答性DNAをチャネルの架橋剤として用いることで、光刺激で二量体の形成と解離が制御可能であることを示した。
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