チャネルの機能が膜環境によって大きく修飾されることがあきらかになり、薬物も膜を介する作用を明らかにすることが求められている。しかし複雑な細胞膜では膜の化学的・物理的特性を変えてチャネル機能の変化を捉えることは難しい。私達は脂質平面膜実験の長い経験があるが、最近になって接触液滴2重膜法(Contact Bubble Bilayer; CBB)を開発することに成功した。この方法により、チャネルの単一チャネル電流を測定しながら膜組成を急速に変化させることができるようになった。細胞膜にコレステロールが存在するとKcsAカリウムチャネルは活性化ゲートを閉じることが明らかになった。数種類のステロールでも同様の効果が見られ、この非特異的効果を解明するための実験法を開発した。それは脂質二重膜の膜張力を測定する方法である。この方法を確立することができ、コレステロールによる効果が膜の張力を減少させることによることを明らかにした。 このような実験系に加え、チャネルタンパク質をCBB法でin vitro転写・翻訳することにも成功した。転写・翻訳に必要な組成のキットを使い、チャネルDNAを加えると、翻訳されたチャネルは膜に組み込まれ、チャネル機能を発現した。この方法によりチャネル機能発現を膜電位が促進することを発見した。この方法の確立により様々なチャネル蛋白の発現系を開発中である。
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