研究課題
ATP受容体のP2Xは、痛みの受容と伝達、血管の拡張、炎症反応など様々な生理機能に関係している。これら生理機能はP2Xから流入する陽イオンによる膜の興奮やCa2+による細胞内応答により発揮される。興味深いことにP2Xでは、本来硬い分子構造基盤の上に成り立つとされるイオン透過に特徴があり、時間経過とともに透過するイオンのサイズが変化するという「ポアの柔軟性」を呈する。しかしながらその生理機能や分子メカニズムは解明されていない。本研究では、申請者が見いだした蜘蛛毒及び、虫駆除薬を利用してP2X4受容体の「ポアの柔軟性」を固定し、各ポアサイズに対応した分子細胞機能を明らかにすることを目的としておこなう。構造生物学的解析や分子間相互作用解析を行い、大きなサイズのポアの構造、および毒の結合の構造基盤を明らかにする目的で行う。本年度は、P2X4受容体に対する蜘蛛毒の阻害効果をATP投与後の時間経過と共に解析した。同様に、P2X4受容体に対する虫駆除薬のシグナル増強効果をATP投与後の時間経過と共に解析した。種々のチャージキャリアを用いて解析を行った。P2X1受容体とP2X2受容体に対しても蜘蛛毒および虫駆除薬の効果を解析し、受容体間の際を比較検討した。蜘蛛毒と虫駆除薬が受容体に採用する構造基盤を明らかにするために、ドッキングシミュレーションにて、結合分子構造を検討した。既知のサカナのP2X4受容体をテンプレートとしてほ乳類P2X4の構造をホモロジーモデルで作成し、ドッキングシミュレーションを行い、結合構造を検討した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定通り、発現系を用いて電気生理学的に蜘蛛毒および虫駆除薬の効果を検討することが出来た。既知の構造情報を基にしたドッキングシミュレーションを行うことが出来た。また、並行して進めているP2X受容体と種々の分子の結晶構造解析に成功し報告した。この成果は蜘蛛毒や虫駆除薬との結合を解析する研究を飛躍的に進展させた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展している。
P2X受容体のポアの柔軟性「時間経過と共にイオン透過性が変化する」の機能的側面および構造的側面を解析する。研究代表者の見いだした新規蜘蛛毒ブロッカー及び、虫駆除薬を利用してP2X4受容体のポアの柔軟性を固定し、各フェーズに対応した分子細胞機能を明らかにする。本年度見いだした知見をもとに、培養細胞を用いてのイメージングおよびマウスの初代培養を用いての検討を行う。ドッキングシミュレーションにより検討を付けた結合構造の確からしさを検討するため、変異体を用いて解析する。
当初計画では、本年度は発現系での電気生理学的解析、イメージング解析、ドッキングシミュレーションを行う予定であった。本研究の遂行に深く関わる二価イオンの結合した構造、ATPの結合した状態とCTPの結合した状態の結晶構造解析および電気生理学的機能解析の報告を優先させたため、イメージング技術による実験を次年度に廻した。結晶構造解析で明らかになった、受容体に効果をもたらす分子の結合様式に関する知見は本研究遂行の遂行に大きく貢献した。
試薬購入に250,000円、学会参加旅費に60,000円、実験補助員の雇用に300,000円、その他印刷出版費に25,279円
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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