研究課題
本研究の目的は、近年発見されたCalcium Homeostasis Modulator (CALHM)チャネル機能を基盤とした感覚情報伝達機構を包括的に探索・解明することである。そのために、本研究ではin vivoにおけるCALHMチャネルの組織学的・生化学的・生理学的解析を高感度に可能にするマウスモデルの作成、および、これら新規ツールを用いたin vivo CALHMチャネル機能探索・解析を行う計画をしている。本年度は、当初の計画通り二つのCALHMチャネルサブユニットCALHM1およびCALHM3に関する遺伝子改変マウスモデル(CALHM1-Cre-IRES-V5マウスおよびCALHM3-tdTomatoマウス)の作成に成功した。また、本研究で作成したCALHM1-Cre-IRES-V5マウスの味蕾組織においてCALHM1の生化学的検出に初めて成功し、CALHM1チャネルがin vivoにおいてS-パルミトイル化修飾を受けていることを明らかにした。さらに、S-パルミトイル化修飾がCALHM1チャネルに及ぼす影響をin vitroの系で詳細に解析し、パルミトイル化部位の特定(Cys100, Cys207)、パルミトイル化酵素の同定(Dhhc3, 7, 20)、さらにはCALHM1チャネルのゲーティングおよび脂質ラフト局在がパルミトイル化によって制御されていることを明らかにした。本研究成果は神経伝達メディエータイオンチャネルの新規制御メカニズムを明らかにしたもので、現在論文投稿中である。さらに、上記2つの遺伝子改変アリルの両方をもつダブルノックインCALHM1-Cre-IRES-V5;CALHM3-tdTomatoマウスの作出にも成功し、今後の研究の進展に必要な研究ツールが揃った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、CALHMチャネルサブユニットに関する遺伝子改変マウスモデル(CALHM1-Cre-IRES-V5マウス、CALHM3-tdTomatoマウス、および、CALHM1-Cre-IRES-V5;CALHM3-tdTomatoマウス)の作成に成功した。さらには、そのうち一つのマウスを用いてCALHM1チャネルの翻訳後修飾の存在およびその役割を包括的に明らかにすることができた。この点は計画以上に順調に進展している部分である。一方で、CALHM3-tdTomatoマウスにおいて、組織学的な解析が計画通りにいかない部分があり、この点は今後の改善が必要とされる。以上の通り、予定以上に進展しているものと進展が遅れている部分があり、全体としてみると概ね順調に進展しているといえる。
CALHMチャネルサブユニットに関する遺伝子改変マウスモデル(CALHM1-Cre-IRES-V5マウス、CALHM3-tdTomatoマウス、および、CALHM1-Cre-IRES-V5;CALHM3-tdTomatoマウス)の作出に成功したので、今後はこれらのマウスを用いて、CALHM1およびCALHM3が発現する組織を網羅的に解析し、また発現組織における機能解析を進めていく予定にしている。ただ、CALHM3-tdTomatoマウスにおいて、遺伝子配列は設計通り改変できているが、CALHM3発現細胞におけるtdTomatoの発現が極めて弱く、想定通りの組織学的解析ができない現状である。したがって、増感法などを駆使してCALHM3発現組織の解析の感度を上げる工夫を凝らしていく必要があると考えている。
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