研究課題
無肥料・無農薬で自然栽培されたリンゴ果実には病原菌に侵されにくいものが存在するが、その理由は十分明らかでない。そこで自然栽培されたリンゴ果実5mm四方を切り取り、表面をアルコール及び次亜塩素酸にて殺菌処理し培養したところ、Alterinaria属の胞子形成を認めた。これは果実内部の嫌気環境で共生する真菌由来と推定され、これら真菌が同一環境で類似栄養素を利用可能な病害真菌と競合し、その増殖を抑制している可能性もあり、興味深い。一方、リンゴ果実の皮下に多量に含まれるポリフェノールPhlorizin/Phloretinは、多様な糖輸送体を阻害すると共にバクテリアの糖代謝を阻害する抗菌作用を示す為、これらのポリフェノールと共生真菌の関係が注目される。幸いPhlorizin/Phloretinは真菌類の糖輸送体HXT を直接阻害しないが、最近HXTがバクテリアの糖代謝産物で阻害されると報告された。そこで、リンゴはポリフェノールを介して共生バクテリアを制御し、更に共生真菌を間接的に制御することにより、病害微生物から果実を保護するとの作業仮説を立てた。本研究ではこれら微生物の糖利用の様相をオリジナル技術「蛍光糖(fG)イメージング(日米欧特許取得)」を用いて探ることを目的とする。上記真菌に、異なる性質をもつfGを同時に適用したところ、胞子毎、節毎に取り込みの多様性が示唆されたが、レーザー共焦点顕微鏡による多点断層撮像では、高度な立体構造を示す真菌の評価に限界があった。そこで、生きた真菌を蛍光を用いて3次元的に多面同時観察するシステムの開発を進め、昨年度の国際出願に続き、今年度は実際的な使用を想定したシステムを新たに試作した結果、予想以上に優れた立体可視化性能が示された。本システムは、生きた共生菌の糖摂取のダイナミズムを蛍光で可視化する為の基盤技術として有望で、今後の展開が期待される。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
J. Physiol. Sci.
巻: 67 ページ: 539~548
10.1007/s12576-017-0544-x