研究課題
Nrf2は酸化ストレスに対する生体防御の中心的役割を果たす転写因子であり,p62は摂食調節機構に関与している.これらの背景から,p62とNrf2を二重に遺伝子欠損させたマウス(DKO)を作製したところ,通常食の摂取により非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を自然発症した.NASH患者では,血清中エンドトキシン(LPS)含有量の増加が報告されている.そこで,本研究ではエンドトキシンと肝臓の免疫細胞であるkupffer細胞に焦点をあて,脂肪性肝炎の発症と進展におけるNrf2およびp62の役割を検討した.野生型,p62-KO,Nrf2-KO,DKOマウスの肝,腸管を解析した.各系統のマウスにおいてNASH発症前後の糞便中LPS含有量と血清中LPS含有量を測定した.また,糞便中より16sRNAを抽出し,T-RFLP法により腸内細菌叢を測定した.FITCデキストラン経口投与により腸管透過性を評価した.動物用小型MRIによる肝SPIO-MRIでKupffer細胞の貪食能を評価した.フローサイトメトリーによりKupffer細胞を単離し細胞機能を解析した.さらに,DKOマウスに20週間の摂餌制限,またはProbiotics投与を行い,同様の実験を行なった.DKOマウスでは,野生型に比べ,糞便中LPS含量が有意に増加しており,腸内細菌叢の解析ではグラム陰性菌であるPrevotellaが増加していた.血清中LPS含有量も増加していた.また,FITCデキストランの腸管透過性の亢進が観察された.さらに,Kupffer細胞におけるSPIOの取り込み能が,野生型に比べ減弱していた.DKOマウスにおいて,過食肥満の病態下における腸内環境変化によるLPS産生増加、血清中LPS含有量の増加、Kupffer細胞の貪食能の低下はNASHの発症と進展に重要な因子であると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
DKOマウスのNASH発症には,p62欠損に起因する過食肥満による腸内グラム陰性菌の増加と,Nrf2欠損に起因する腸管上皮バリア機能の脆弱化により,LPSの肝への流入量が増加することが重要な因子の一つであることの重要な研究成果が得られつつある.
腸内細菌由来のLPSが肝臓における代謝機構に与える影響について検討していく予定である.
マウス血清の解析を実施する予定であったが,注文を予定していた測定キットが年度内に搬入されないことが判明したため,急遽注文を中止したためである.
速やかに前年度に発注をかけた測定キットを購入して,解析を進捗させる.
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