研究課題/領域番号 |
16K15190
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
木場 智史 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40565743)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | すくみ / 徐脈 / 中脳中心灰白質 / 視床下部 / 扁桃体 |
研究実績の概要 |
これまでに、恐怖心惹起時の徐脈反応は副交感神経活性に起因すること、中脳中心灰白質の外側・腹外側野(l/vlPAG)の活性化が恐怖性徐脈の一要因であること、l/vlPAGから延髄疑核近傍への投射神経が恐怖心により活性化することをラットの研究から明らかにした(Koba et al. Physiol Rep 2016)。これらの知見を踏まえ、恐怖心による副交感神経活性の中枢経路の解明をさらに進めるのが本研究である。本年度には、恐怖心により興奮しかつl/vlPAGに投射する神経細胞の探索を行った。ラットl/vlPAGに逆行性神経トレーサを注入して約10日後に90dBの白色雑音音を30分間曝露することで恐怖心の行動指標であるすくみ行動を誘発させた。抜脳し免疫染色処置を施した試料に対してトレーサシグナルが検出される領域を全脳的に探索した。その結果、扁桃体中心核や視床下部外側野、視床下部腹内側野、島皮質等にシグナルが検出された。また、Fosタンパク質発現も調査したところ、トレーサとFosとの共陽性細胞が扁桃体中心核や視床下部腹内側野では見られなかった一方で、視床下部外側野(LH)では確認された。これらの結果から、LHからl/vlPAGへの投射神経(LH-l/vlPAG神経)は恐怖心によって興奮すると考えられた。本年度には研究室の整備も行い、テレメトリを用いた覚醒ラットでの生体信号記録系の確立を目指した。複数のラットから動脈圧・心拍数・交感神経活動を同時記録する実験系を立ち上げた。またこの系を用いて、恐怖心による副交感神経活性(白色雑音音曝露時の徐脈反応)を再現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の具体的な達成目標の一つ目は「恐怖心によって興奮する中脳中心灰白質の外側・腹外側野への投射神経の探索」であった。前述のように、LH-l/vlPAG神経がそれであることを突き止めた。達成目標の二つ目は「テレメトリシステムを用いた覚醒ラット生体信号記録系の確立」であった。研究室を整備し、複数のラットから動脈圧・心拍数・交感神経活動を同時記録する実験系を立ち上げた。またこの系を用いて、恐怖心による副交感神経活性(白色雑音音曝露時の徐脈反応)を再現できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後には、これまでに収集した知見や確立させた実験系に加えて、別プロジェクトで確立しているラット中枢経路の機能操作系を組み合わせた実験を行う。具体的には、ラットに恐怖心を誘発させた際の自律神経・循環反応に、LH-l/vlPAG神経の人為的興奮/抑制の影響を調査する。
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