研究課題/領域番号 |
16K15191
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
上番増 喬 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (10581829)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 栄養 / 代謝 |
研究実績の概要 |
腸内細菌叢は、食事や宿主との相互作用により腸内に複合的な環境場を形成している。腸内環境場の異常は、ビタミンなどの栄養素や生理活性物質の産生・供給に影響する。中でも、妊娠期のビタミンB群の不足は、神経管閉鎖不全のみでなく胎児の遺伝子やヒストンのメチル化などエピゲノム修飾の変化を介して、次世代の生活習慣病の素因を形成するため、腸内複合環境場の制御は次世代の健康管理にも重要である。本研究では、腸内環境を複合的な場として捉え、これまで困難であったビタミン等の生理活性物質合成能を定量評価し、その生理学的機能をモデルマウスを用いて質的に評価する。さらに、腸内複合環境場の最適化による次世代栄養療法の確立を目指す。 始めに、ビタミン欠乏食摂取時の盲腸、糞便、血液等のビタミン濃度をメタボローム解析により測定した。しかしながら、ビタミン濃度は測定限界を下回っており、同定できなかった。この時同時に測定した、様々な代謝産物濃度を多変量解析により解析した結果、ビタミンB群欠乏で変動する代謝産物を発見した。現在、この代謝産物濃度が変化するメカニズムの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内環境場から供給されるV.B等の生理活性物質量を、メタボローム解析により定量的に評価することを試みた。しかしながら、現段階ではサンプル中のビタミンB群濃度は検出限界よりも低い事がわかった。現在は測定方法を改善するために、液体クロマトグラフィー等を用いた解析を準備している。本実験で解析した代謝産物を詳細に観察すると、腸内環境場から供給され、ビタミン代謝に依存して変動する代謝産物を見出した。現在、腸内細菌叢とこれらの代謝産物との関連性を検索中である。 Agouti vaiable yellowマウスを利用し、妊娠期の腸内環境場の違いが、胎児のエピゲノム修飾や成長後の生活習慣病発症に及ぼす影響を質的に検討した。その結果、ビタミンB欠乏食を摂取した親から産まれたマウスと、通常食を摂取した親から産まれたマウスの間で毛色に大きな違いは認められなかった。現在第3世代を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ビタミンB群の濃度網羅的測定方法を改良しサンプル中のビタミンB群濃度は検出感度を高めることにより、腸内環境で合成されるビタミンなどの網羅的解析を促進する。一方で、網羅的解析結果により変動した代謝産物の中からビタミンB群の代謝に関連する代謝産物が腸内細菌叢由来であるか、検討する。 マウスを用いた検討は継続して、Agouti vaiable yellowマウスを利用し、妊娠期の腸内環境場の違いが、胎児のエピゲノム修飾や成長後の生活習慣病発症に及ぼす影響を質的に検討する。加えてメチル化を促進する食事と腸内環境との関連性を検討する。
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