研究課題/領域番号 |
16K15193
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80232198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 時計遺伝子 / うつ病モデル / CRISPR/Cas9 / 遺伝子ノックダウン / Bmal1 / 概日リズム / 振幅 |
研究実績の概要 |
研究目的(概要)※ 当該研究計画の目的について、簡潔にまとめて記述してください。 気分障害には気分の日内変動や睡眠障害など概日リズムの不全を伴うことが多く、この不全は気分障害の重要な症状であるばかりでなく、病因とも関連すると考えられてきた。こうした中、時計遺伝子が発見され概日リズムの分子メカニズムが解明された現在、概日リズム中枢である視交叉上核(SCN)と行動や認知、情動など脳機能を司る領域とのネットワークについて、分子やニューロンレベルでの解析が可能となっており、気分障害の病因・病態解明のための基盤が整ってきている。本研究では、2013年にゲノム編集技術として報告されたCRISPR/Cas9法を、特定の遺伝子発現量を改変する技術として応用し、哺乳類の概日リズム中枢であるSCNを構成する出力ニューロン機能の改変を行うことによって、認知、情動、行動を制御する領域とSCNとのネットワークシステムの役割を明らかにし、気分障害の発症メカニズムを解明する糸口となる研究を目指している。 まず時計遺伝子などのリズム振幅を改変する可能性のある遺伝子をCRISPR/Cas9法によりノックダウンする実験法を培養細胞で確立することを目指した。gRNAを合成しCas9蛋白質とともに培養細胞に導入、ノックダウンを行った。また、一部の遺伝子に関しては従来のベクターを用いた導入法を行った。時計遺伝子のノックダウンでは、時計遺伝子プロモータリズムの振幅が低下するものがあり、リズム振幅低下を指標に神経細胞においてもリズム機能が低下する発現型のモデル動物を作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPR/Cas9 による遺伝子ノックダウンを行うため、時計遺伝子およびリズム振幅改変因子のgRNA配列を設計してgRNA合成を行った。gRNAの有効性を検討するため、培養細胞にgRNAをCAS9蛋白質とともに導入し、変異の導入の有無を検討した。各標的遺伝子に対し2箇所の配列を設計し導入したが、両者とも配列の変異が確認されず、再度gRNA配列を設計して培養細胞に導入し、変異を確認しているところである。当初、ベクターによるgRNAを導入する方法を計画していたが、RNAによる導入が効果的とする報告から、変更して行っている。現在、変異導入効率について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本実験から、時計遺伝子のノックダウンによって、時計遺伝子プロモーターリズムの振幅が細胞レベルで減衰する結果が得られた。この表現型は時計遺伝子の発現量の低下と関連しているものと推定される。これらの表現型を動物レベルの各臓器特に神経系で再現することにより、時計遺伝子のリズム振幅の低下が臓器や個体の機能に与える影響を解析する計画である。特に神経系でリズム低振幅モデル作成を通じて、新たなうつ病モデル動物を確立し、振幅振幅増強因子の検察を行い、ひいては新しい抗うつ薬の開発につなげていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施した実験のうち実験計画の通りの遺伝子変異導入できない遺伝子があったため、計画遂行に遅れが生じ、次年度に再実験を行うことになった。
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