研究課題/領域番号 |
16K15196
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
増田 明 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (30612121)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海馬 / 電気生理学 / 時空間情報 / 遅延 |
研究実績の概要 |
待つことや我慢することなど時間に対して適切に対応する能力は海馬を含む脳内ネットワークが重要な働きをしている。海馬がそのような意思決定の間または前後でどのような活動するのかを本研究では調べている。 T字迷路における遅延割引課題中のマウス海馬でシリコンプローブまたはワイヤーテトロードによりマルチニューロン活動記録を行い、遅延時間中に発火する細胞群を複数細胞種で確認した。さらに海馬の遅延感受性反応の動作原理を時間情報、空間情報、報酬情報との関係性から調べた。遅延場所を左右交換した「遅延場所交換」の条件により、遅延時の発火が「遅延が起こる場所」なのか「遅延そのもの」なのかを検証した。海馬CA1の興奮性細胞は遅延自体に反応するものは少なく、遅延場所の移動によって反応場所(受容野)がともに移動するというものは約20%だった。約70%の大多数の細胞は元の遅延場所でのみ発火する、いわゆる場所細胞の特徴を示した。また遅延時の発火が遅延で待たされるストレス誘導性の反応なのか遅延後に得られる報酬を期待するものなのかを報酬量を変えることによって検証した。CA1興奮性細胞は報酬量を減少させるとほぼすべてのCA1興奮性細胞で遅延時の発火が徐々に減少した。これは遅延時の発火が報酬を期待するものである可能性を示唆する。これら2つの特徴は海馬特有であるかどうかを、比較するため内側前頭前野での記録を行った。内側前頭前野では遅延の場所よりも遅延自体に反応を示す細胞が大多数であり、報酬量を減少させると発火が増大する細胞と減少する細胞が同じような割合で現れた。海馬CA1における時間、空間、報酬との関係性は内側前頭前野の興奮性細胞とは異なっていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた遅延場所交換の実験、報酬量変化の実験がスムーズに進み、結論を導き出せたことに加え、統制のために内側前頭前野からの記録と対照することでそれらの結果が海馬特有であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、マウスの選択行動と神経発火パターンの相関解析と固執傾向のある海馬興奮性細胞のNMDA受容体欠損マウスにおける検証を予定通り行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が異動することになり、当該年度と次年度をスムーズにまたいだ研究遂行のため主に消耗物品の購入を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
動物および消耗品類の充足に充てる。
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