研究課題/領域番号 |
16K15199
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 祐一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10744419)
|
研究分担者 |
熊谷 英敏 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20281008)
森田 啓行 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60323573)
篠原 正和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 自己免疫性心筋炎 / 心筋線維化 / プロスタグランディンD2 / H-PGDS阻害薬 |
研究実績の概要 |
各種心疾患において心筋組織の肥大、壊死、線維化といった心筋リモデリングが共通しておこることが知られているが、現有の治療では心筋リモデリングを十分に制御できていない。心筋リモデリングの進展に炎症が関与することが徐々に明らかになりつつある。炎症反応においてはプロスタグランディン類をはじめとする脂質メディエーターが重要な働きをしている。近年、デュシャンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデル動物であるmdxマウスおよびDMD犬において、プロスタグランディン(PG)D2合成酵素の一つである造血器型PGD2合成酵素(H-PGDS)を阻害すると、大腿四頭筋の壊死・炎症の範囲が軽減し、筋力低下が改善されることが報告された。本申請研究において、骨格筋組織で認められたPGD2系制御による抗炎症作用を心臓(心筋組織)において外挿し、PGD2系を介して炎症性心筋リモデリングの進行をコントロールできるかどうかを検討した。自己免疫性心筋炎を生じているマウス心臓のリピドミクス解析を行ったところ、PGD2産生量がコントロールに比して増加しており、またH-PGDS阻害薬投与によってその量が有意に抑制されることが判明した。さらに心筋炎誘発後のday 18、day 25においてH-PGDS阻害薬投与群において、炎症によって惹起される心臓の線維化が抑制されていた。また全心臓サンプルでリポカリン型PGD2合成酵素(L-PGDS)の発現量がmRNAレベルにおいてH-PGDSに比して圧倒的に高いにもかかわらず、心臓におけるPGD2の産生は炎症によってリクルートされてくる血球細胞に存在するH-PGDSにかなり依存しているという興味深い新規知見も得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス自己免疫性心筋炎を誘発するための従来の実験プロトコールでは、その炎症の誘発の程度において当初の予想以上に個体差が大きいことが判明した。そこでより安定的に自己免疫性心筋炎を誘発するようにプロトコールを改良するとともに、当初の計画を上回る個体数のマウスを実験に要した。以上の理由により、実験計画はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
H-PGDS阻害薬投与によって自己免疫性心筋炎を起こしているマウス心臓においてPGD2産生量が抑制され、それに伴い心臓の線維化が抑制されることが判明した。今後は、自己免疫性心筋炎を起こしている心臓にリクルートされてくる血球細胞のうち、どのような細胞のタイプがH-PGDSを主として発現しているかを検討する。
|