研究課題
本研究では、我々が最近発見したシステイン-tRNA合成酵素による生物種横断的なシステインポリスルフィド生合成および翻訳に共役したタンパク質ポリサルファ化の分子メカニズムを解明し、その生理機能を明らかにすることを目的としている。本年度の研究では、ポリサルファと親電子物質との反応性に基づくタンパク質ポリサルファ化解析システムを開発するとともに、各種組換えタンパク質を用いたシステインt-RNA合成酵素によるシステインポリサルファ合成の解析を行った。まず、各種低分子ポリサルファ化合物と8-ニトロ-cGMP、ヨードアセトアミド、N-エチルマレイミドなどの各種親電子物質との反応により生成する化合物を質量分析装置(LC-MS/MS)により、同定・定量解析をおこない、ポリサルファの化学的反応性を調べた。ポリサルファの親電子化合物とのユニークな反応特性を利用した親電子プローブ標識ゲルシフトアッセイを新たに開発し、特異的かつ高感度なタンパク質ポリサルファの検出システムを構築した。システイン-tRNA合成酵素(大腸菌CysRSおよび真核生物CARS1/2)の組換えタンパク質を作製し、システインを基質としたシステインポリスルフィド生成活性をLC-MS/MSを用いて定量的に解析した結果、CysRSおよびCARS1/2が極めて効率よくシステインポリスルフィドを生成することが示された。さらに、CyRSおよびCARS1/2は、システインポリスルフィドをtRNA上に取り込むことにより、翻訳とともにポリサルファ化タンパク質を生成することが示された。これらのことから、システイン-tRNA合成酵素が生物種横断的なシステインポリスルフィド生成系として機能し、タンパク質ポリサルファ化に主要な役割を果たしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
特異的かつ高感度なタンパク質ポリサルファの検出システムを構築や各種組換えシステイン-tRNA合成酵素のシステインポリスルフィド合成能の解析など、当初計画に沿った解析を行い目的とする研究成果を得ることができたため。
研究目的に鑑みて、これまでのところ研究を遂行する上での問題はなく、順調に研究が進展している。引き続き当初計画どおりに、翻訳に共役したポリサルファ化タンパク質生合成機構の解明に向けた研究を推進していく。
実験実施計画等を見直し効率的に研究を行った結果、当初計画よりも少ない経費で、タンパク質ポリサルファの検出システムを構築や各種組換えシステイン-tRNA合成酵素のシステインポリスルフィド合成能の解析等において、目的とした研究成果が得られたため。
本研究の目的である翻訳に共役したポリサルファ化タンパク質生合成機構の解明に向けて、次年度におけるさらに詳細な分子メカニズムの解析のために使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 3件、 査読あり 18件、 謝辞記載あり 13件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 8件、 招待講演 18件) 備考 (1件)
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