研究課題/領域番号 |
16K15211
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
泉 哲郎 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (00212952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞医科学 / インスリン / 膜輸送と輸送タンパク質 / 生体膜 / 内分泌学 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
低分子量GTPase Rabファミリーは、細胞内膜輸送の制御を担っているが、このうちRab27aは、細胞内刺激に応じて分泌小胞膜を細胞膜に融合させる調節性分泌経路に特異的に機能することが知られている。Rabは、GTPと結合した活性型が、エフェクターと呼ばれるタンパク質と結合することによって、細胞内膜を輸送させるが、Rab27aについては、これまで11種知られており、その多くは、分泌顆粒膜を細胞膜にリクルートするなど、分泌の後期過程に作用する。我々は、Rab27aエフェクターの一つNoc2が、Rab27aとともに、Rab2aにも結合し、分泌顆粒の成熟など分泌の初期過程を制御することを見出した。Rab2aは、Rab27aが結合した後にはじめてNoc2と結合でき、Rab2a-Noc2-Rab27a三者複合体は、核周囲の未成熟顆粒に特異的に局在する。これに対してNoc2-Rab27a二者複合体は、細胞辺縁部の成熟顆粒に局在する。次に、Rab2aの結合に必要なNoc2の領域を決定し、Rab2aに結合できないNoc2変異体を作製した。この変異体は、野生型Noc2と異なり、グルコース依存性のインスリン分泌を促進できない。また、Noc2もしくはRab2aのノックダウンは、Rab27aのノックダウンと異なり、前駆体プロインスリンからインスリンへのプロセッシングを低下させる。これらの実験結果は、デュアル・エフェクターNoc2が、Rab2aが機能する分泌顆粒生合成過程と、Rab27aが機能する分泌顆粒開口放出過程の橋渡しを制御していることを示唆する(以上、Matsunaga et al., J. Cell Sci., 2017に報告)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、新規に見出したRab2a-Noc2-Rab27a三者複合体の結合様式、細胞内局在、インスリン分泌過程における機能解析等を終了し、論文としてまとめ、報告できた。
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今後の研究の推進方策 |
Rab2a-Noc2-Rab27a三者複合体の形成・解離を制御すると考えられるNoc2の翻訳後修飾を解析する。特に、リン酸化、糖鎖付加、ユビキチン付加などを調べる。また、その翻訳後修飾過程を制御する、シグナル伝達機構を研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、これまで蓄積した研究成果を論文としてまとめるための実験を中心に行った。そのため、今後の研究を進展させるために、次年度に資金を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、当初の計画通り、生化学、細胞生物学などの手法による解析に必要な、遺伝子関連試薬、生化学・組織化学試薬、細胞培養などに消耗品購入を中心に使用する。情報収集・交換、成果発表のための学会参加費用・旅費にも充てる予定である。
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備考 |
群馬大学生体調節研究所 遺伝生化学分野 泉研究室 http://molend.showa.gunma-u.ac.jp/
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