研究課題/領域番号 |
16K15214
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
金井 正美 東京医科歯科大学, 実験動物センター, 教授 (70321883)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ヒト化マウス / 細胞再構築 |
研究実績の概要 |
腎臓透析や移植手術が必要な末期腎不全患者は30万人、年間4-5%増加しているものの、腎疾患治療は再生医療において最も困難な分野の1つである。その理由としては、腎臓が20種類の細胞からなる複雑な構成であり、ターンオーバーが遅いことが上げられ、成体腎臓内には幹細胞が存在せず自然には再生しないことにある。我々は、ジフテリア毒素と受容体を用いて、特定の細胞のみを任意の時期に死滅させ、精細管内閉鎖環境に外来細胞を置換することが可能な新規トランスジェニックマウスを開発し、ヒト抗ミューラリアンホルモン (AMH) プロモータ-にヒトジフテリア毒素受容体 (DT) を連結したトランスジェニック (DT-Tg) マウスの作出に成功した (Shinomura M. et al., Reproduction. 2014)。本申請では、このDT-Tgマウス精細管に精巣と同じ中間中胚葉由来組織である腎臓細胞を移植し定着させることで、in vivo腎臓内ニッチと分化環境を同定すると同時に、生体内での腎臓細胞最終分化への構築を目指す。本年度は細胞置換トランスジェニックマウスの遺伝子背景を免疫不全症マウス (NOD) にバッククロスし、異種間移植への準備を整えているプロセスである。xenotransplantation(ヒト由来細胞や他の動物の細胞移入)、ヒト化マウス作出への準備を実施中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NODマウス飼育について、SPFバリアントの吸排気バランスの不調が当初認められたが、再設置し、現在は免疫不全マウス飼育のための環境を整備できている。一方、Tgマウス作出実験とその条件設定に関しては、ヒトジフテリア毒素 (DT) 投与後セリトリ細胞を死滅させ、幼弱腎臓細胞に置換し既存マーカーにて定着細胞を同定した。レシピエントには line94-GFP DT-Tgの3週令雄マウスを、ドナーにはH2B-mCherryマウスを用いることで移植細胞を識別を可能とした。以前報告した至適条件に準じて、Tgマウスに4μg/kg 毒素を腹腔内投与し、その4日後 (4日放置することでDT無毒化を行う) に移植した。現在prelimienaryな実験結果ではあるが、生後8日齢の腎臓細胞を精細管内へ移植し、その結果から、精細管内に外来腎細胞が定着した像が観察された。置換された細胞はmCherry陽性外来移植細胞、セルトリ細胞マーカーSox9陰性、腎臓マーカーPax2陽性である事が確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト抗ミューラリアンホルモンは雌雄生殖巣の支持細胞(雄のセルトリ細胞は胎生13.5日から出生直後まで、雌顆粒膜細胞は生後3日からadultに至るまで)に発現している。このDT-Tgマウスにジフテリア毒素を投与することで、任意の時期に雄精細管内のセリトリ細胞(支持細胞)を死滅させ、外来支持細胞に置換することが可能となった。現在は、本DT-Tgマウスの遺伝子背景を免疫不全症マウス(NOD-Skid)にバッククロスし、異種間移植の準備を整えている途中であり(6世代)、今度はヒト化マウスやxenograftが可能となるNOGへ更に2世代バッククロスする。精細管は管状の閉鎖空間で、比較的免疫寛容を受け易い環境を有する。腎臓細胞など、他組織の細胞の移植は、今度、内分泌かく乱化学物質,放射性物質等の安全性試験、様々な物質に対する反応性の種間差を知る良い系となる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末、事務処理不備により、次年度繰越となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度消耗品に加算する。
|