研究課題/領域番号 |
16K15220
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
別所 康全 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70261253)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 転写 / 発生 / 転写因子 / 同調 / Notch |
研究実績の概要 |
2倍体生物では、1つの細胞は任意の遺伝子を2つしか持たないので、1つの細胞についてある遺伝子のある瞬間の転写状態は、2遺伝子座が転写されている、1遺伝子座が転写されている、転写されていない、の3状態しかない。組織レベルで転写が活性化されている領域でも必ずしも全ての遺伝子座が転写されているわけでなく、3状態の細胞が混在している。マウス胚尾部では、一群の遺伝子の転写が周期的にONとOFFを繰り返している(振動している)が、それらの遺伝子の中で同じ転写制御を受ける3つの遺伝子の転写活性状態を、それぞれの細胞の遺伝子座レベルで同時に検出し、それぞれの転写活性化のキネティックス、遺伝子座間の協調性などを解明することを目指した。 マウス胚尾部で発現が振動している遺伝子として、Hes7、Lunatic Fringe (Lfng)、Notch-regulated ankyrin repeat protein (Nrarp)に着目した。これらの遺伝子の発現はマウス胚の体節形成周期に同期して、2時間周期で振動している。3つの遺伝子の転写はNotchシグナルによって促進され、また転写因子Hes7によって抑制されるが、Notchシグナル活性、Hes7タンパク質の量が、それぞれ2時間周期で増減するので、組織レベルでは同調して振動することが観察される。 まず、3つの遺伝子の転写状態を単独で、核細胞の遺伝子座レベルで検出することを試みた。これまでに蛍光プローブを用いて、転写の遺伝子座レベルの検出は成功しているが、本研究では当該の遺伝子座の転写状態を調べようとするものであるので、検出感度を高めて偽陰性率を低くする必要がある。今年度は検出感度を高める条件を検討し、ほぼ条件を決めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛍光プローブを用いたin situ hybridizationによって遺伝子座レベルでの転写を検出する手法は、既に確立されたものであるが、これまでは遺伝子座ごとの解析はおこなわれていないので、検出感度はある程度以上であれば問題にはならなかった。しかし本研究では遺伝子座レベルの転写活性化状態のキネティックスを評価しようとしているので、検出感度を十分に高くする必要がある。検出感度を高くするための条件検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
対象とする3つの遺伝子のぞれぞれの転写活性化状態を遺伝子座レベルで検出し、解析をおこなう。Hes7、Lfngについてはある程度研究が進んでいるので、Nrarpについてデータ解析を進める。Hes7、Lfngについては、転写直後の転写産物を検出するために、イントロン領域にプローブを設定して、成熟したmRNAが検出されないようにしている。しかしNrarpはイントロンを持たない遺伝子であるために、その手法が使えない。コーディング領域をにプローブに設定したプローブでは成熟したmRNAを同時に検出してしまうので、バックグランドを高めてしまうことになるが、核内のスポット状のシグナルを評価すればよいので理論的には、コーディングに設定したプローブでも転写活性化状態の遺伝子座レベルでの検出は可能である。実験条件をさらに検討してNrarpの転写家政科状態の検出をおこなう。 3つの遺伝子のうち、2つずつの組み合わせで遺伝子座レベルでの転写活性化状態を同時に検出する。 さらに3つの遺伝子の遺伝子座レベルでの転写活性化状態を同時に検出する。同時に遺伝子ごとの転写キネティックスを評価して、数理モデルを構築することを試みる。
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