研究課題/領域番号 |
16K15226
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
古瀬 幹夫 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 教授 (90281089)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / クローディン / 上皮バリア機能 / ゲノム編集 / 傍細胞輸送 |
研究実績の概要 |
本研究の前半では、タイトジャンクションの構造と機能の両方において中心的機能を担うクローディンファミリー遺伝子をゲノム編集により不活化させることにより、クローディンを発現せず、タイトジャンクションを形成できない培養上皮細胞を樹立することを目指している。28年度は、作製済みであったクローディン2遺伝子とクローディン4の遺伝子の両方を不活化させたMDCKII細胞を用いて、TALEN法によるゲノム編集と蛍光抗体法によるスクリーニングから、さらにクローディン3遺伝子、クローディン7遺伝子、クローディン1遺伝子をこの順に重ねて欠失させた細胞、すなわちクローディン1、2、3、4、7欠失するMDCK II細胞を樹立することに成功した。 さらに、MDCKII細胞には上記以外に少なくとも、クローディン6、8、12、16、20、22がmRNAレベルで発現していることをRT-PCR法により明らかにした。MDCKII細胞がイヌ腎臓に由来することから、これらクローディンファミリーのイヌcDNAをクローニングし、ヒト、マウスのクローディンファミリーに対して作製された自作あるいは市販されている既存の抗体の反応性を調べた。その結果、イヌのクローディン6、8、12、16、20は既存抗体により蛍光抗体法で検出できることが明らかになった。したがって、MDCKII細胞に内在するこれらのクローディンの発現が蛍光抗体法レベルで検出可能であれば、今後さらにこれらのクローディン遺伝子をゲノム編集により重ねて不活化する際に、蛍光抗体法によるスクリーニングを適用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集による変異導入に基づき、5つのクローディンサブタイプ遺伝子の発現を重ねて不活化した培養上皮細胞の樹立に成功した。さらに、他に発現するそれ以外のサブタイプの同定と、これらのタンパク質を検出する抗体についても確認が進んでおり、今後さらにゲノム編集を重ねてこれらのクローディンサブタイプを不活化する目処がついたことから、当初の予定通りに順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
クローディン1、2、3、4、7以外にMDCKII細胞に発現することがRT-PCRレベルで確認されたクローディン6、8、12、16、20、22のうち、22を除くものについて、蛍光抗体染色、ウェスタンブロッティングによりMDCKII細胞におけるタンパク質レベルでの発現を確認する。そしてタイトジャンクションへ局在が確認できたクローディンについて、28年度に樹立した5つのクローディンサブタイプを不活化させた細胞にゲノム編集により変異を導入して不活化させた細胞を順次樹立する。クローディン22については信頼できる抗体が現時点で入手不可能なため、抗体を自作してMDCKII細胞における発現を確認し、これがタイトジャンクションに局在することが確認できれば、やはりゲノム編集により遺伝子発現を不活化する。ゲノム編集の方法としては、これまで用いてきたTALENに代わり、より簡便なCRISPR/Casシステムが研究グループでも動き出したので、今後は後者を用いる。 また、28年度に樹立したクローディン1、2、3、4、7欠失細胞では、タイトジャンクションのマーカーである膜タンパク質であるオクルディンのタイトジャンクションにおける発現が蛍光抗体法レベルで減弱しており、上皮細胞シートのバリア機能も低下傾向が見られることが予備実験により確認されている。そこでこの細胞の性状をタイトジャンクション形成と上皮バリア機能の観点から詳しく解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の2つの理由により次年度使用額が生じた。1)28年度に行った本研究に関する打合わせが、別の用件も含まれていたために本研究費とは別の財源から支出したこと。2)5種のイヌ由来クローディンサブタイプに対する抗体を作製する必要があると見積もっていたところ、そのうちの多くは既存の抗体が反応することが明らかとなり、またクローディン22については抗体作製を29年度に延期したこと。
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次年度使用額の使用計画 |
イヌクローディン22に対する抗体を29年度に作製する予定である。また、作製したクローディン欠失上皮細胞のバリア機能の解析のために様々な分子量のトレーサーをあらたに購入する必要があるので、その費用にあてる予定である。
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