研究課題
腫瘍組織にはがん抗原を認識する細胞障害性T細胞が浸潤するものの、ほとんどは疲弊(exhaustion)し、有効な殺細胞機能を発現しない。さらに、抑制性T細胞や抑制性ミエロイド細胞が誘導され腫瘍組織に浸潤することで腫瘍免疫が無効化される。本研究では、細胞障害性T細胞機能をおさえ、抑制性T細胞分化を促進する転写因子Bach2に着目し、Bach2を阻害することで腫瘍免疫を活性化する、という斬新な治療戦略を開発する。阻害法としては、補欠分子ヘムがBach2のリガンドとして転写調節作用を抑えるという独自の知見に着目する。本年度は野生型およびBach2ノックアウトマウスから単離したナイーブT細胞を試験管内で刺激し、その活性化の過程、特に遺伝子発現プロファイルの変動を比較した。Bach2ノックアウトT細胞では細胞傷害性に関わる多数の遺伝子の発現がより上昇、あるいは早期に上昇することを見いだした。Bach2のクロマチン免疫沈降実験のデータと統合解析することで、これら細胞障害性に関わる遺伝子の多くがBach2により直接転写抑制を受けることが示唆された。前年度の研究でマウス個体にヘムを投与することでBach2の働きを変化させられるか検討したが、有意な変化は認められなかった。そこで、シグナル伝達経路やBach2コファクターを標的にできるかどうか、検討を開始した。その結果、Bach2の不活性化に関わると思われる複数のタンパク質キナーゼやコファクターを特定することができた。
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Tohoku J. Exp. Med.
巻: 241 ページ: 175-182
10.1620/tjem.241.175.
http://www.biochem.med.tohoku.ac.jp/