研究課題
転写因子NRF2は、酸化ストレスからの生体防御に重要な役割を果たしている一方、多くのがん細胞で異常に活性化し、その悪性化をもたらしている。本研究ではNRF2陽性難治性がんの克服を目指し、がんにおけるNRF2活性化が、宿主の抗腫瘍免疫との関係において果たす腫瘍形成能促進のメカニズムの解明に挑んだ。まず、がん細胞を抗腫瘍免疫が機能するマウス宿主に移植してその性質を解析するために、マウスに同種移植が可能であるNRF2陽性がん細胞の作成を行った。得られたNRF2陽性がん細胞モデルを用いて、がん特異的なNRF2の下流因子の探索を行った。さらに、同定されたがん特異的なNRF2下流因子のがんにおける機能評価を行った。Keap1遺伝子欠損マウスからマウス胎児線維芽細胞を樹立し、SV40 T抗原と活性化型変異HRASを導入することで、NRF2陽性のがん細胞モデルを作成することに成功した。当該細胞は、NRF2依存的にC57BL/6マウスの皮下に腫瘍を形成した。また、当該細胞では、腫瘍形成時特異的にNRF2の下流でIL-11の顕著な発現上昇が観察され、Il11遺伝子を欠損させると腫瘍形成が著しく抑制された。乳がん患者の検体の検討からも、NRF2陽性がんの多くがIL-11陽性であり、乳がんではNRF2とIL-11の連携ががんの悪性化をもたらしていることがわかった。以上のことから、NRF2が活性化状態にあるがんの腫瘍形成はIL-11に大きく依存する場合のあることが明らかになった。今回の結果から、とくに固形腫瘍を形成するがん細胞の性質の評価は、がん微小環境のもとにおける腫瘍形成能で評価することが極めて重要であることがわかった。NRF2が恒常的に活性化している乳がんでは、IL-11が有効な治療標的となる可能性が示唆された。
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