研究課題/領域番号 |
16K15231
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
華山 力成 金沢大学, 医学系, 教授 (40403191)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 他者融解 / リソソーム / MRI / 可視化 |
研究実績の概要 |
マクロファージや好中球などによるリソソーム酵素の放出は他者融解と呼ばれ、腫瘍細胞や細菌を融解して死滅させる生体防御機構の一つとして古くから報告されている。一方、リソソーム酵素の放出が過剰になると、周囲の健常細胞を融解・死滅させ、様々な病態を引き起こす。そこで本研究では、 他者融解がどのような病態の発症に関与するか組織学的に解析するとともに、 MRIを用いて他者融解を生体内で可視化する技術(特異的プローブ)の開発を目指す。リソソームの中には様々な加水分解酵素が含まれており、中でもプロテアーゼはカテプシンだけでも15種類以上存在する。よって、生体内で実際にどの種類の酵素が放出され、心血管炎系傷害を引き起こしているのかは、ほとんど明らかになっていない。そこで私達は、生体内で放出されたプロテアーゼをMRIで可視化する技術の開発を行った。19Fナノ粒子(FLAME)は、高感度なMRIプローブであるが、ガドリニウム(Gd)錯体で周囲を覆うとMRIで検出することができなくなる。そこで、19Fナノ粒子とGd錯体とをプロテアーゼの認識配列を含んだペプチドで繋ぎ、19Fナノ粒子をGd錯体で覆い隠した新規プローブを開発した。マクロファージ・好中球から放出されたプロテアーゼが存在する場合、その酵素の認識配列を含むペプチドが切断されGd錯体が19Fナノ粒子から解離することにより、MRIで19Fのシグナルが検出可能となる。このプローブは酵素認識配列を変えるだけで容易に各種プロテアーゼに対応可能である為、心血管系傷害において、どの酵素がいつどこで放出されるのかを明らかにすることが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミノカプロン酸(Acp)をリンカーとして、Gd錯体・カテプシンKの酵素認識配列ペプチド(HPGGPQ)・19Fナノ粒子の三者を結合させたプローブ(FLAME-(Gd-Acp))を作製した。このプローブをカテプシンKと反応させMRIで検出を試みると19Fシグナルの強い上昇が確認できたが、カテプシンSの作用によっても同様に上昇してしまい、特異性に改善の余地があることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこのプローブに改良を加えて、カテプシンKに対する特異性を向上させたプローブを開発する。すなわち、1)リンカー部位にAcpより長いジエチレングリコール(Deg)やDeg2などを用いる、2)酵素認識配列を複数タンデムに導入したペプチドを用いるなどの改良を加えることで、カテプシンKに対する酵素反応性を上昇させたプローブを作製し、その感度と特異性をMRIで検討することにより、MRIプローブの最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年間の基金である為、無理に年度内で消化せず、若干の金額を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬の購入にあてる。
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